六話 突撃! 隣へ夕ご飯
「すみませ~ん!」
行ったぁあああ!!
え、マジで? あの話聞いた後に突撃すんの?
着替え直して(というかこれから出撃する可能性あったのになぜ寝る用の服に着替えたよ俺)外に引っ張り出された俺。
なずなは今、右手には皿(蓋付き)、左手で扉ノック。
扉には『新聞勧誘お断り』という張り紙があるが、これは勧誘ではないのでセーフか。
いや、アウトだ。
「おい、おいって」
止めに入る。
「はい? なんでしょう?」
「いや、もう夜だしさ。向こうも迷惑かも知れないだろ?」
「必要な時にガンガン行かないとチャンスはモノに出来ませんよ?」
「今その時かな!?」
「ここに住み始めた時点で顔見せしてないんですよね? じゃあ自力で出来るんですか? 最初で最大のチャンス見逃してるのに」
「ぐっ」
言われればたしかにそうだ。基本俺は受け身だし、状況に合わせようとして滑ってたフシがあるし、そりゃあ何も主人公っぽいことは起きないよね。
「もしも~し! お裾分けに参りました~」
ノック連打。チャイム? 電気に乏しいんだからそんな物ある訳ない。いや、代用品はあるけど、ここにはない。
「すみませ~ん!」
「いないんじゃね?」
「いや、いますよ。光は漏れないようにしてるのかも知れませんが、先ほどノックした時に少し物音がしましたから」
「……相手が嫌がってるんならするべきじゃないと思うけど……」
「う~ん。嫌がってる相手ってドアの近くで待機して、耳を扉にくっつけてこちらの様子を探ったり玄関と廊下行ったり来たりするものなんですか?」
「は?」
え? いんの? 近くにいんの?
そう思った時ガタッという音が
「貴方、夜に何を見ていらっしゃるんでしょうね」
聞こえると同時に黒なずなの一言が。小声でぼそりといっただけなのになぜか心の芯まで凍えたぞ。……新聞勧誘よりタチが悪い。
ドタドタという音が止まる。走って行こうとしていたのに、秘密を握られているかもという不安からか動けなくなったらしい。
「開けてもらえますか~」
「おい、ちょっと待て! それ脅迫じゃ」
「いや、元々この子出るつもりだったみたいですし……貴方がついてきていることに気付かなければ」
「え?」
この子? え、何? 知り合い?
「いや、え? さっきこの部屋の人のこと聞いてたじゃん」
「この子とはあまり趣味が合わないので情報に乏しいので何かしら喋れる話題がほしかったんです。……流石にあれは無理そうですが」
え~とつまり元々顔見知りだけどあまり話さない関係。……そんな男いたっけ?
そんな時、ガチャリという俺の部屋のドアが開くのと同じ音がして扉が開く。
勢い良く開く。
こちらを向いていて反応が遅れたなずなにぶち当たるくらい勢い良く開く。
結果として身体的なダメージを負ったなずなが空いてる左手で頭を押さえてぷるぷる震えているが、正直因果応報なので打った箇所を確認した後ポーション渡して放置。
それよりも精神的なダメージを負ったはずの被害者こと隣人を見る。
隣人もぷるぷる震えていたが……あれ?
初対面の隣人。
肩にかかるくらいの髪。
髪色は水色。
Tシャツに短パン。
瞳の色は昼間の快晴、空の色。
ああ、なるほど。初対面の隣人は初対面ではなかった。
「…………なずなさんの……意地悪」
隣人の一言。
少し顔が赤く、今はふてくされている。
「いや、でもこのくらいやらないとカナは彼と顔を合わせようとしないでしょう?」
頭を押さえながら立ち上がるなずな。
俺は別の意味で頭を押さえたい。
「……そういうことか」
理解した。
ものすごく簡単な思い違いをしていたんだ。
つまるところ。
「久しぶり……というにはまだ早いか。こんばんは。撫子ちゃん」
そこにいたのはそれなりに見慣れた、可愛らしい女の子だった。
本章のヒロイン登場です。




