二十七話 兄妹邂逅
白い天井。
白い壁。
病室というのはそういうものだと思いがちだが、残念ながら全ての病室に設備が整っている訳もなく。
とりあえず病室にベッドがあるという点だけでもありがたいかな。
あの直後昏倒した兄、陽炎は未だ目覚めない。
まさかの高レベル輸血技術とどこぞの闇医者レベルの腕前の外科医の尽力で一命を取り留めたけど……
医者が言うには
「何かの反動じゃないか?」
とのことだけど……心当たりは一つだけ。
あの焔。
あれは明らかにアビリティの範疇にない何かだ。
「いったい、何をやったらこんな風に変わっちゃうんだよ……」
夜闇に一人、呟く。
「それはな」
独り言に言葉が返る。
見れば兄が起きていて。
「ッ! 痛ぅ。え、と。まあ、そもそもうちの家系的に仕方がないというか」
「は?」
「いや、え~と。聖遺物関係を輸送……この場合は護送か? するのを生業にしててな」
輸送関係のお仕事ってそれかッ!
「え、ちょ」
「そんな訳でやや呪われていた我らが家系、こういった事態は割とよくあるらしい」
「……はぁ」
何それ?
「で、僕は三度目」
うわ、初めてじゃないんだ……
「……つまり、『前の騒動で習得した異能、そのまま使っちゃったぜ~』と。そういうこと?」
「いや、まあ正気が遠のいていたというか……うん。概ね正しいね」
「駄目じゃん」
「ですよね~」
苦笑いを浮かべている。
脂汗も浮かべている。
「体、大丈夫なの?」
「ドクターストップは間違いなくかけられてたろ?」
「そっちじゃなくて!」
「反動でまともに動けん……が、まあ大丈夫だろ」
手を挙げて見せるも、かなりぷるぷる震えていて、ちっとも大丈夫には見えない。
「日常生活にも支障が出るレベルだよ!」
「生命維持に支障が出るレベルよりましだろ?」
開き直る兄。
「問題は僕個人じゃなくて世界の側」
「はい?」
「ゲームのルールの裏をかくやり方で自分の異能に書き換えたんだ。さっきやったのはクラッキングだよ。世界に何らかの影響が出るんじゃないか心配だ。……何かあっても僕動けないし」
「なんてことを……!?」
「ついでに言えば、ソウルイーター使ってた奴らが何ら反動を受けてなかったぽいことも問題だな。……あれ、この世界の法則の範疇に留まる代物じゃないはずなのに」
「そう言えば孝平は何も……?」
「そうだよ。そういうこと。あいつらは簡単お手頃に相手を除外する手段を持っていることになる。これはまずいよね。あいつらがアビリティ以外の能力も持っている可能性も捨てきれないし。最悪、僕みたいにアビリティをガン無視して超能力でごり押ししてくる可能性さえある」
「ちょっと待って。それって僕ら不利なんじゃ」
「そこまで不利でもないぞ。この世界は普通の人間でも強くなりやすい世界で、かつそのルールを外れると一気に潰しにかかるはずだから」
「えと、要するにこの世界でアビリティ使う分には問題ないけど超能力とか使うなら世界に拒絶される、と」
「そゆこと。まあそれでも強行出来る可能性は捨てられないけど」
「……どうするんだよ」
ほんと。
「対策の一つくらいは療養中に立てておくよ……これ、完治まで何年くらいかかるんだろ?」
「知らないよ……って年単位!?」
「そりゃ、このザマだしね。正直痺れが取れそうにない」
「それって大丈夫なの?」
あ、さっきと同じ質問だ。
「大丈夫だって。……あ、ちょっと心配事が」
「何?」
この際だし聞いてあげよう。
「弟子になんかおかしなことが起きてるっぽいんだけど」
「分かった、調べてくる!」
善は急げ!
ワープクリスタル起動。
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「あ、行っちゃった……やばいなぁ。絶対何かやらかすなぁ」
ああ、朝日が眩しいなぁ。
現実逃避してみる。
台風、大丈夫ですか?




