覚醒
引き続き、いろは目線です!
「遊憂…!?」
名前を呼び掛けても、反応はない。
遊憂は、眼を細め……
「去れ」
両手を突き出し、炎を出した。
でも、青かった。
青い炎だった。
縄のように細い炎は、男を縛りあげるように拘束する。
「ぐっ…!」
呻き声を出し、苦しむ男。
容赦がない。
遊憂は、それでも静かに…
「去らないのなら、消えろ」
手を叩いた。
すると、男を縛る炎の縄は、もっときつくなる。
「ゔゔゔ…」
もう見ていられなくなったいろは。
「遊憂!遊憂でしょ!?もうやめて。だめだよ。死んじゃう」
「そうだぜ遊憂。人殺しになるぞ?」
「蝋の言う通りね。遊憂」
「そうだね。力ずくでも止めなくちゃね…」
上から、蝋、權那、粕楽。
いつの間に目覚めたのか、後ろで立っていた。
「…みんな…?」
眼に光を取り戻した遊憂は正気に戻ったらしく、炎の縄を緩めた。
「遊憂!分かったんだね。よかった…」
ぎゅっと遊憂を抱きしめる。
本当に良かった…!
半泣きになってるのを悟られないよう、震えているのを堪える。
「オレ、なに…を…」
バタリと倒れる遊憂。
「遊憂!」
「遊憂!!」
みんなで名前を呼び続けていると…
『あーあ…もうちょっとだったのに。残念』
頭に響いてきた言葉。
聞き覚えのない声だった。
みんなも聞こえたらしく、あたりを見回している。
『まぁいいや。またくるよ。じゃあね、遊憂…と、その友達』
それっきり声は聞こえなくなった。
遊憂は意識を失っていた。
みんなはずっと、その場で立ち尽くしていた。