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松竹梅・後

「行け」

小さな狐火を灯すと、空に放った。

狐火はまるで蛇のように細長くなり、飛んで行った。

梅を、探すためだ。

「じゃ、さがすっスよ!」

ガサガサガサガサ…

オレは、近くの雑木林を調べ始めた。

********************************

だいぶ、時間がたった。

しかし、一向に見つかる気配はない。

「なあ、刹鬼?」

「?」

「アンタのお母さん、死んじゃってるの?」

「ーっ…」

「図星、か」

沈黙が、続いた。

その沈黙を破ったのは、刹鬼だった。

「よく分かったっスね…なんでっスか?」

「アンタと初めて会ったときから、おかしいなって思ってたんだ」

狼願は、初めてオレにあったとき、槍を持っていた。

それで客人につっかかっていた。

こんな危ない行為、だれかが止めるはずだ。

刹鬼は目を見開き、蝋達も驚いていた。

つまり、いつもはこんなことしないってことだ。

いくらボケててもそこは大人、ちゃんと理性が止めるだろう。

なのに理性は止められなかった。

理性が失われる事件があったんだろう。

じゃあその事件は?

これは、刹鬼の行動で解かれる。

刹鬼は、家事全般をやっていた。

雷鳴家の家事、全部をだ。

前の夕食、布団敷き、風呂沸かし、着替えの用意…

ほかにも、もっとやっているはずだ。

本来なら、母親がやるべき仕事を。

それに、オレは2回来たにもかかわらず、母を見た事がない。

それから…理性が失われる事件は、母親が亡くなる。

それで理性を失うには充分だろう。

「見事な推理っス」

「でも、実際穴だらけだ。オレはプロじゃないからな」

「お母様は、自分が生まれた直後に亡くなりました」

「そんな前なのか…」

「ハイ。でも、かなりの愛妻家だったお父様は今でも立ち直れなくて、最初は、しばらく自室に籠って出てこないほど落ち込んでいました」

「…」

「自分は、写真の中のお母様しか知りません」

「悪かったな、酷なことを聞いた」

「いえ、いいんス。大丈夫っス」

また、沈黙が流れた。

「一人ぼっちは、寂しいか?」

「…ハイ」

「そうか…」

一区切り置いて

「一緒だな」

微笑んで、言った。

刹鬼も、笑った。

*********************************

「ふう…」

疲れた。

額には汗がにじみ、手には土がついている。

しかし、こんなことでめげるオレ様じゃない!

すると、

「狐火がやってきたっス!」

本当だ。

「…見つけたらしい」

「行くっス!」

「ああ、ほかに手段は無いな」

2人一緒に、走り出した。

**********************************

「梅!」

ぐでーーーーんと言う効果音がぴったりの梅。

所々傷だらけで、額もかなり熱い。

「大変っス…!」

「みんなの所へ行け!」

狐火に指示する。

「蝋は狼願と、かるたはいろはと!權那は竹と一緒、粕楽は松と探している。早くしろ!」

「記憶力いいっスね」

「まあな、欒!お前も!」

『待ってましたぁ!』

ずっとポケットの中に入っていた欒。

「お前は皆にこの事態を伝えてこい!狐火は喋れない、あくまでも道案内だ!」

『はいよっ』

上へと飛んでいく欒。

しばらくすると、ピタリと止まった。

『みいいいいいんなああああああああああ!!!!!!!!!!!』

みいいんなあああ!!!みいいんなあ!!みんなあ!み…んなぁ……な…

「うるっせええええ!!!!」

『私よ!欒よ!梅が見つかったわ!いまそこに狐火が行ってるわ、道案内よ!』

まだ欒のビッグヴォイスは続く。

『でも、梅は傷だらけ!おまけに熱まであるわ!早く屋敷に戻って、治療してるから!』

まだまだ続く。

『狐火は安全に屋敷に戻るためのものよ!しっかりついて行きなさいよ!!』

ひらりと戻り、ポケットに収まる欒。

「行こう!」


**************************************


ふう…(2回目)

梅は、大丈夫 だった。

でも、しばらくは寝続けるようだ。

これにて、一件落着?

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