鈴
みんなが起きてくる8時ごろ。
りん…ちりん…
どこからか、鈴の音が聞こえた気がした。
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「えーもう行っちゃうんスか?」
「そうなのよ。ゴメンね?」
「今度はコッチに遊びに来いよ」
「はいっス…」
ふてくされてる刹鬼をよそに、着々と帰る準備を進めているオレ達。
よし、まとめ終わった!
その時…
ちりん、ちりん。
[サミシイナァ。モウイッチャウノ?]
「ーーーーーッ!」
後ろから聞こえたから、反射的に後ろを向いてしまう。
誰もいない…気のせいか…いや、今確かに…
鈴の音と一緒に、誰かの声…そう。
【久しいですね。遊憂】
あの狐の面を被った男の声だった。
それに、声はもちろん、鈴の音にまで違和感を感じた。
普通ではない、何か。
それが、あの鈴には有る。
音色が低くて、でも高くて。
ゴロゴロとのぶとい音を感じれば、奥にあるチリッと短く響く音も感じる。
自分で何を言っているか分からなくなってきた。
とにかく、普通じゃないんだ。あの鈴は。
矛盾。矛盾の繰り返し。
あの音を聞くだけで、頭が割れるように痛くなる。
他のみんなも同じなのか?
「…い!おい、遊憂!ゆーうーゆーうー!」
ハッとする。
深く考えすぎてたみたいだ。
「んじゃーなー!また来るよ!」
蝋が大きく手を振り、オレ達もそれに続く。
「じゃーねーっス!」
屋敷に背を向け、歩き始める。
ここは竹藪の近くに建っている。
そこを抜けると、小さなバス停がある。
それに乗り、街までいけるのだ。
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バス停までついた。
……あっ…
「刹鬼にお母さんのこと聞くの、忘れてた…」