『』
いつも以上に長い気がします!
さすがだな…。
オレは心の底からそう思った。
さすが、陰陽師の家というだけあって、 夕食は豪華だった。
それで、美味い。
「じゃ、紹介するぞ~」
ほのぼのとした空気。
狼願のほのぼのとした声がそれをより一層引き立てた。
狼願のそばにいるのは、刹鬼と男性3人と男の子1人。
「僕、雷鳴 瀞露と言います。長男です」
童顔の男性が言った。
「雷鳴 梢。次男」
切れ長の瞳の男性が言っ(以下略
「おいらは雷鳴 薄蓮!変な名前だけど、よろしくな!三男だ!」
明るそうな男性が言っ(以下略
「こっちは、50年くらい前から此処に住んでいる、座敷わらしの梅君っス」
ぼーっとしてる梅…くん?めんどくさいから呼び捨てでいいや。
子供っぽいのに50年くらい前から住みついてるとか…あり?
「純粋な妖怪っス♪」
「さて、本題に入るぞ!」
空気が一変する。
「さーてと…これじゃ!」
鼻歌を歌いながら(!)何かを差し出す狼願。
狼願によると、元々はその破魔の太刀を支えていた、対なる刀らしい。
破魔の太刀は、悪を断ち切る聖なる刀。
でも、善だけが増えても、バランスがとれないんだと。
人間の心の中には、悪と善、2つがないとその人間は壊れてしまうんだ。
「じゃあこれは…」
『闇咲の太刀』
「!」
『闇を増幅させるフシギな太刀よ』
あたりを見回しても…やっぱり誰もいない。
『まーだ気付かないの?鈍いわねぇ』
「鈍いとかマジ酷い…」
ボソッと呟く。
あの時聞いた声と似てる…いや、「同じ」。
蝋達をみる。
聞こえてないみたいだ。
『平気よ!別に害を為すものでもないから…でも、退屈ね』
どうかしたのか?
『こんなに気付かない人、始めてみた』
イラァッッ……
うん、害、為してるよ。イライラ急上昇中だよ。
『めんどくさくもなってきたし…そろそろ出ちゃおっかな~…♪」
ポゥンッ
ちっちゃい…ふわふわの…黄金色の毛並み…そう、
【狐】だ。
『やっほー♪遊憂!覚えてないかもだけどね、欒だよー』
「ら…欒?」
いや、誰ってゆう言い方はおかしいのか?いや、でも…
「誰だ?」
『ひどっ』
「お、おい!こいつなんだ?いきなり…!」
「狐っスか?」
『こいつとか酷いわね!私、欒。遊憂の母さんの、パートナーよ!」
!
母さん?母さんの事、何か知ってるのか?
「あんたの母さんは死ぬ前、遊憂に伝えてほしいって、伝言をのこしたの」
「あ、死んでたんだ。」
「うん、病気でね。重かったみたいで」
「うぉっ、淡々と話進んでる!」
「おいてかれちゃうよーっ」
欒が言うには…
[遊憂が判るまでは、教えないであげて…気付いたら、力を貸してあげて。よろしく頼みましたよ、欒。]
『あんたの母さん…乃癒様はそう言ってた。約束したのよ。私は」
「じゃ、さっきの「覚えてないかも」って…」
溜め息をつき、
『私、遊憂と何度か遊んだことあんの』
「乃癒さんって言うのか!お前の母さん」
「初めて知った」
「ははは!にぎやかっスねー!」
『それ、闇咲の太刀よね?聞いたことあるわ』
「ふぉふぉふぉ…よく知ってるの。そうじゃ!これが闇咲の太刀。闇を司る太刀じゃ!」
見ているだけで気が重くなってくる、深い闇色の刀身。
「自分たちも見るの久しぶりっス。変わらないっスね…この邪悪さ」
2ヶ月間、放置した生ゴミを見るような目で刀を見る。
その時だった。
いきなり、声が聞こえたのは…
「どうも今日は…また、盗りに来ましたよ」
声の聞こえた方向……庭を見る。
「久しいですね、遊憂。でも、覚えていないかな…」
いたのは…狐のお面を深く被った…体格からして、男か…?いや、でもなんでオレの名前を…。
「その様子ですと、覚えていないようですね。寂しいなぁ」
…ったく…!また問題が起こったか!
「めんどくせぇ…」
「え?」
「…なんでもねぇ」
「でも、今日は客人が多いようですし…また、来ますよ。今日は、いいです。でも…」
見てはいけないものを見たような気がした。
「次は、頂きますよ。その刀…」
その刀?闇咲の太刀のことか?
そう思い、もう一度男を見ようとした…
…が、もう居なかった。
オレ達以外…陰陽師グループは、重い沈黙をながしている。
聞く事も出来ない、聞かれる事も出来ない。
その沈黙をやぶったのは、狼願だった。
「実は…」