↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

公園で鉄の剣は作れる

『錬金』というシステムは、基本的に二種類の使い方がある。


 一つ目がランダム錬金。あるいはガチャ。

 適当な物品を五個ぶち込んで作動させれば、中に突っ込んだ物品の量や価値、性質に応じて新しい物品が出来上がる、というものだ。

 その時の錬金でゴミが出来るか良品が手に入るかは完全に当人の運次第。

 壊れたペンを五つブチ込んだとして、高級万年筆が出てくる可能性もあれば、突っ込んだどのペンよりも派手にぶっ壊れてるペンが出て来る可能性もあるわけだ。


 しかし5個も物を突っ込めば、大抵は突っ込んだ物品の丁度平均くらいのものが出て来る。

 だからさっきの壊れたペン五本の話で言えば、同じくらい壊れたペンが一本出力される可能性が一番高いわけだ。

 

 で、そんなランダム性を完全に排除したのが『レシピ錬金』と呼ばれるもの。

 特定の組み合わせで錬金を実行することで確実に特定の物品を作り出すことが可能になる、というもので、『聖剣』はこれを途方もない回数を繰り返してようやく入手できる。

 具体的な数は……えぇと、まぁ少なくとも数千回以上だ。

 尤もそれは全部の素材をマジで最初の最初から作る場合で、途中素材が別口で入手できるのなら回数はグッと減るのだが。


 例えば俺が今から作ろうとしている鉄の剣なんかは、聖剣を作るにあたって二百本くらい必要になる素材だが、金さえあれば幾らでも購入できるわけで。

 わざわざ鉄の剣を何度も何度も錬金して作る必要は微塵も無いのである。

 

「そういうわけで、まずは記念すべき第一鉄剣を公園から作ってみることとする」


 一応、素材は揃っているはずだから、作れるものとは思う。

 まぁ無理だとしても、鉄剣ならまだ買えるから何とかなる。

 別のもので実験をしてみるとしよう。


 ちなみに鉄剣の『レシピ』は、『青銅の剣×1、鉄×2。または石の剣×1、鉄×3』となっており、余った枠に意味はない。鉄の量を増やせば性能が増すというだけだ。

 しかし、ここで性能を増しても、もう一個上の魔剣に変えた時に特に補正があるというわけでは無いので、埋めずとも問題はない。


 で。鉄は磁石とビニール袋で集めた砂鉄で一度判定を確かめてみるとして。

 作成素材として青銅の剣と石の剣のどちらかが選べるが、今回は流石に作成難易度からして石の剣にする。


 石の剣の『レシピ』は『木剣×1、石×4』で、木剣が『ナイスな木の枝×5』となっている。つまり鉄の剣の『レシピ』を最底辺の素材だけで表すと、『ナイスな木の枝×5、石×4、鉄×3』となる。これを錬金釜にぶち込んでチンすれば、一本でも一万円を超える鉄の剣を無料でお手軽に作れちゃうわけだ。


 とんでもないチートだと思うだろ?

 実際チート……というか、グリッチみたいなものだからな、錬金術。

 このくらいは容易くやってのけるのだ。


 とはいえ、この世界でもそのグリッチが通用するかは未知数。

 だから俺はまず、家にイイ感じの木の棒5本を持ち帰り、錬金釜にぶち込んで、魔力を通す。

 イイ感じの枝に関しては出来る限り太くて真っすぐなものを選んだつもりだが、マジで俺の主観でしかないので、ナイス判定されるかどうかは不安なところである。

 さて、結果は──────


「うん、問題ないな」


 釜を開けると、中には一本の立派な木の剣が立っていた。

 その辺の雑木の枝から作ったはずなのに、何故か見事な白樫で作られている事に関しては、まぁあまり気にしない方が良い。そういうものだ。


「……しかし、素材の判定は割とガバガバなのか?」

 

 ゲーム内ではこういった素材は特定のイラストで表現されていたが、現実になった以上、全く同じ形の素材が存在するわけでは無い。

 だからある程度は見逃されるだろう、とは思っていたが。

 まだ最初も最初だし、どこまで許されるのかを検証してみたい。


 と、そんなことを考えて、この辺りに落ちている木の枝を取り尽くす勢いで検証した結果、幾つか分かったことがある。


 まず、素材は一定以上のサイズは要求されること。

 少なくとも70cmくらいの枝でなければアウト判定が出るようだ。

 一つでも満たさない枝が入っていた場合、ランダム抽選の方が回された。

 

 次に、完成する木の剣は、それぞれ素材や形状に差異が発生するらしい。

 この辺は恐らくだが、『木の剣』に該当するものがランダムに出力されるという事なのだろう。

 反りのある木刀が作られたこともあったから、『素材が木で、剣として扱えるもの』が『木の剣』として出力されるものだと予想する。


 最後に。ある程度の異物は無視される、ということ。

 木の枝の中には葉とかがまだ付いているものがあったりしたが、その辺は消えた。

 恐らくだが、虫や微生物の類も全部消えているものと思われる。

 ちょっと大きい虫とかは釜の方がエラーを吐いて停止してくれるが、小さすぎたりするとそのまま消滅するようだ。

 まぁ、うん。流石に全部取り除くとかは無理だからね。仕方がないね。

 

「さて、そろそろ検証はいいだろ。あとは必要に応じてやればいいし」


 というわけで、次は石の剣を作成する……と、言いたいところだったが。


「……げ」


 もうそろそろ7時だ。

 こうなってしまったらもうこれ以上の外の活動は無理だな。

 俺は……岩井リツトは、『いい子』として通っている。

 それがいきなり錬金釜を貰ったら、錬金に夢中になって門限を無視しました、何て事になったら、ワンチャン釜を取り上げられるかも知れない。


 今日はもうここでおしまいだ。

 鉄の剣を作るのは、また後日とするとしよう。


「ただいま」

「おかえり」


 家に帰ってから暫くすると、鍵を開けて帰って来るのは我が麗しのマイファザーだ。

 事故か何かで妻を失ってから男手一つで俺をここまで育て上げたシングルファザーであり、かつて各地のダンジョンに潜っていた冒険者でもあるが、今では冒険者を引退して定職に就いている。

 俺を親無しにしないように、という配慮なのだろう。


「……錬金は、楽しそうだな」

「うん」


 そんな父が俺にそう言うのは、錬金釜の近くに敷かれたレジャーシートの上に並べられた、様々な品を見ての事である。

 流石に木の剣を何本も作っている所を見られるわけにもいかないので、雑草とかゴミとかを突っ込んでランダム錬金し直した物品たちだ。

 見るからに意味のない、しかし見たことも無い雑品が並べられている姿は、子供が興味の赴くままに外で物品を調達してはランダム錬金を繰り返していたように見えるだろう。


「家の物を、使ったりはするなよ」

「してないし、する気も無いよ」

「……お前の場合、本当にそうなんだろうな。…………飯は」

「もう出来てるよ。今日は鯖ね」

「そうか」


 この家の飯の担当は俺だ。

 小4くらいで、ようやくガスコンロを使えるようになった辺りから、ずっと俺が作っている。

 何ならスーパーとかで材料を買ってくるのも俺だし、家事の大半をするのも俺。

 父はその分担に物申したそうにしていたが、仕事をしながら家事をするのも大変というものだろう。この辺の負担は、まだ学生の俺が引き受けるべきなのだ。


「いただきます」

「いただきます」


 食卓に着き、手を合わせる。


「……リツト」


 暫く黙々と箸を進めていたところで、父が俺に呼び掛けた。


「何、父さん」

「…………どうして、今になって、錬金を?」

「……あ、今それ聞くんだ」

「買った時は、お前の事だから、大丈夫と思ったが。今思うと、少し心配でな」


 父親の目線が遠くに移る。

 職場とかで何か思う事があったり、言われたりしたのだろうか。

 まぁ、別に誤魔化す必要はないし、正直に言ってしまおう。

『聖剣』云々とかラスボスとかは流石に伏せるとして……


「必要に駆られたからだよ」

「……必要」

「そ。どうしても作らなくちゃいけないものが出来た」

「……………………………………………………錬金で、か?」


 父親の目が細められる。

 ……まぁ、今の世界の常識で言えば、そうだろうな。

 ランダム錬金を無数に存在する作成対象から特定の物品が作られるまで無限に回し続けるなど、とてもではないが正気とは思えない。

 一応、釜に突っ込む物品次第で作られるものはある程度絞られるとはいえ、それでも狙い通りの物が完成する可能性は極めてゼロに近い。

 そんな天文学的数値に息子が挑戦しようとしていることは、親にしてみれば心配なのだろう。


 でも、俺はそんな確率に挑むつもりは無い。


「まぁ、見ててよ。もう少ししたら、面白いのが出来るから」

「…………わかった」


 父は俺の発言に対し、何か言いたげなようだったが、一先ず納得しておくことにしたらしい。

 再び黙々と食事に戻り、食べ終わったら、それぞれ自分の部屋に帰った。


 明日は学校が終わったら砂鉄集めだ。

 どれくらいに必要になるか分からんが、頑張って集めよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。