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主人公が死んだ。

作者: エンゲブラ
掲載日:2026/08/09

主人公が死んだ。

えらいこっちゃで。


そもそも「主人公」って何やねん。

という話だが、

実際に主人公なのだから仕方がない。


この世界は「小説の中」の世界だ。

しかも、()()()が書いた。


それなりにヒットし、続編を書いている途中、

私は死んだ。心臓発作で。


毎日、起きている間は椅子に座る生活。

そりゃ死んでもおかしくはない。


―― で、「転生したら自分が書いた小説の世界だった件」というわけである。


私は、モブキャラどころか、

小説世界におけるただの背景。

イチ住人として生まれ変わった。


自分が考えた王朝名に、敵対魔王。

そして今世の勇者の名前を確認した時、

「これ、わしが書いた小説の世界やないかーい!」

と気付いたわけである。


私には、何の役割も与えられていないし、

勇者は強運を駆使し、

なんやかやで魔王を討伐する運命。


だったら、自分は出来るだけ

楽に暮らしたいというのが人情というもの。


私は、原作知識を駆使し、

それなりに稼ぎ、この世界で富豪となった。


勇者のハーレムの一員となるお気に入りのキャラも、

先にひとりだけいただき、

順風満帆な第二の生を楽しんでいた。


―― その矢先、勇者の訃報が飛び込んできた。


私は、自分の耳を疑った。

なにせ、ご都合主義的な幸運の連続で、

魔王討伐を果たすのが彼の役割。


なので、当初は

「どうせどこかで生きているに違いない」と考えた。


だが、彼の遺体がこの王都まで戻ってきたのを見て、

私は顔面が蒼白になった。


ひょっとして、

本来、勇者が手に入れるはずだった幸運の腕輪と

幸運を運ぶ少女を私が先に失敬したから、

彼は死んでしまったのではないのか?

―― と気付いて。



いやいやいや、そんなことくらいで、

勇者は死なないだろう。

この世界の「主人公」だぞ?

いや、しかし……。



勇者の死を確認した国王は、ひとつの勅令を出した。


先見の巫女が次の勇者を見つけたため、

その者が、次の魔王討伐遠征に旅立つという。

そして、その者の名は―― <私>だった。


いや、わし……ただの一般人ぞ?

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