主人公が死んだ。
主人公が死んだ。
えらいこっちゃで。
そもそも「主人公」って何やねん。
という話だが、
実際に主人公なのだから仕方がない。
この世界は「小説の中」の世界だ。
しかも、私自身が書いた。
それなりにヒットし、続編を書いている途中、
私は死んだ。心臓発作で。
毎日、起きている間は椅子に座る生活。
そりゃ死んでもおかしくはない。
―― で、「転生したら自分が書いた小説の世界だった件」というわけである。
私は、モブキャラどころか、
小説世界におけるただの背景。
イチ住人として生まれ変わった。
自分が考えた王朝名に、敵対魔王。
そして今世の勇者の名前を確認した時、
「これ、わしが書いた小説の世界やないかーい!」
と気付いたわけである。
私には、何の役割も与えられていないし、
勇者は強運を駆使し、
なんやかやで魔王を討伐する運命。
だったら、自分は出来るだけ
楽に暮らしたいというのが人情というもの。
私は、原作知識を駆使し、
それなりに稼ぎ、この世界で富豪となった。
勇者のハーレムの一員となるお気に入りのキャラも、
先にひとりだけいただき、
順風満帆な第二の生を楽しんでいた。
―― その矢先、勇者の訃報が飛び込んできた。
私は、自分の耳を疑った。
なにせ、ご都合主義的な幸運の連続で、
魔王討伐を果たすのが彼の役割。
なので、当初は
「どうせどこかで生きているに違いない」と考えた。
だが、彼の遺体がこの王都まで戻ってきたのを見て、
私は顔面が蒼白になった。
ひょっとして、
本来、勇者が手に入れるはずだった幸運の腕輪と
幸運を運ぶ少女を私が先に失敬したから、
彼は死んでしまったのではないのか?
―― と気付いて。
いやいやいや、そんなことくらいで、
勇者は死なないだろう。
この世界の「主人公」だぞ?
いや、しかし……。
◇
勇者の死を確認した国王は、ひとつの勅令を出した。
先見の巫女が次の勇者を見つけたため、
その者が、次の魔王討伐遠征に旅立つという。
そして、その者の名は―― <私>だった。
いや、わし……ただの一般人ぞ?




