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- 4 - 新しい復元された文章と魔力の波形 2


"悪夢すぎるだろ。あれは一体なんだったんだ"



灯りの付いていない部屋は真っ暗で、まだ日の出には程遠い時間だろう。



だが、自分がベッドで寝ていることであれは夢で自分ではないと改めて実感しながら思わず両手で顔を覆う。



時間の経過とともに落ち着きを取り戻したレンは、あまりにリアルな感情や痛みを伴う夢と莫大な情報を目にした疲れか頭が麻痺した様で考えても答えも見つからず、寝直す事も難しそうで渡された水盤を照合にかけてしまおうと作業部屋に移動することにした。



作業部屋には用途毎の魔法陣が施された魔導体が嵌め込まれた大きな水盤があり、魔力を水盤に流して作業をする。



今回頼まれた照合は王族に連なる者しか照合・解析できないよう魔法陣に仕掛けがしてあり、情報を盗まれないようリスクヘッジがされている。



ここで既に判明している古代文と照合し、内容をある程度確認してから、解読担当者を決めていくことになる。



露見しても特に問題がなさそうな物は、業務が空いている者から立候補制で。



問題がある、または全く現在判明していない物に関しては母を中心に王家に忠誠と許可なく口外できない神聖契約を結んでもいいから、何が何でも新しい解読をしたい人間でできたチームで解読の研究が行われている。




仕事で神聖契約を結ぶなんてと言う人も居るが、必要だと再認識させられたのが今回の例で、誰ももう反対を唱えることは出来なくなった。



副所長は解読よりも研究者のディレクションや補佐的な業務を好み、重要機密に関わる部門に所属していなかった為に簡易契約しかしておらず、今回の騒動が起きるきっかけとなった漏洩が行われた。



これを機に全ての研究所関係者には口外禁止の神聖契約が必須となった。かと言って解析には信頼性だけではなく他にも問題がある。



内容的に機密的な話だけでなく、研究者が解読した内容に精神的なショックを受け、療養や部門変更になる場合もある為に解読の割り振りは慎重にならざる終えず、神聖契約を結んだのだからより高度な解読を望む若手の存在や派閥の功績争いで、レンの仕事はよりハードになっている。



レンとしてはあと2,3人ぐらい自分と同じポジションの人間が欲しいと思うが、王妃がもう1人王子を産むか、外交に夢中の王女が王子に変わり王になるか、幼い姉姫の娘がお姫さまになる夢を諦めて研究者になりたいとでも言わない限り増えないだろうと思わずため息を吐きたくなる。



派閥や人柄がしっかりとしていて、研究に命を注いでも構わないと思う変わり者が早く出て欲しいと祈りながら、渡された水盤をセットして魔導盤に魔力を流していく




―――――――――




魔導盤に魔力を流して行くと、水の色が自分の魔力の色に染まっていく。


"寝てもあの悪夢のせいか、短時間しか寝れなかったせいか、魔力的にキツイな。一度…"



作業工程を考えていると扉をノックされた。



作業中、問題が起こらないよう部屋に対象者が入れば、他の人間は入る資格があっても部屋には入れない。



しかも、いまは深夜も深夜だ。




こんな時間に誰が。



このエリアまで入って来れる人間は限られている。




どこまでも厄介ごとの気配しかせず、誰であっても話したくないと思っていると、ベルまで鳴らされた。



このまま放置したいが開けるまでしつこそうだと諦めて、扉に向かう。


そして扉を開け、満面の笑顔で佇む人物を見て、そのまま扉を思わず閉めたくなった。



「待て、話がある。開けるんだ、レン。局長命令と王子の命令どっちがいい?」


頭を抱えたくなるとはこういう時にこそ当てはまると思う。



どこに深夜に忍んでくる局長と王子がいるんだ。しかも護衛もなく…



所長の孫が側近と護衛だからと、この時間に普通来るか?



頭の中で散々文句を言いながらも渋々扉を開けて、2人を通す。



もう呆れて何も言いたくなく、そのまま茶を入れに隣接している休憩所へ移動する。



色が変わった魔導機に気を取られ、局長に質問しながらも王子も魔導機で止まらず休憩室まで着いてくる。



「作業を邪魔してすまないな」


「そう思うなら来ないでくださいよ」


「悪いとは思ったんだが、話さないといけないことが出来てな。


レンにも聞かねばならなくて、お前のスケジュールをオリバーに確認したら、今日は泊まりでいると聞いて午前の早い時間までなら王子も時間が取れると言うし、王宮から一緒に王子にも来てもらったんだ。



2人に関わることだし、一緒に聞いてもらって考えて欲しいと思っていたら、ちょうどよくここの灯りがついているからお前さんだろうと思って見にきたんだよ」




嫌な予感が当たりそうで思わず釘を打ってしまう。



「局長、先に言いたい事がある。


いくら局長が所長の代わりに所長の任務を補っていると言ってもここは俺の管轄です。


局長であろうと王子であろうとも、この管轄内では俺の方が権限があるはずだったと思うが、それを分かった上での冗談を今言う意味を説明してもらえますか?


親族だからなどとふざけた事を言ったりした場合は仕事を放棄するが、それも覚悟の上で言っていると?」




目線を泳がせる局長に代わり、少し申し訳なさそうな顔をしている王子が口を開いた。




「悪い。今日、君に彼女たちの相手をさせている時に、本館の研究所へ確認に行ったんだ。


そこで私も参加して新たな古文の抽出ができないか実験した所、かなりの新しいカケラが抽出できた。


それで、その抽出内容が水盤に一度に入らずこちらに運ぶのも難しいようでな。

レンにも本館に顔を出してほしいと希望が上がって、色々相談したいと思って局長に私が無理を言ってきたんだ。


忙しいとこ悪いが助けてもらえないか?」



綺麗な中性的な顔で願う王子にこいつは昔から無意識で顔を使うと思うが、残念ながら俺には通じない。



さて、これは怒ってもいい案件なんだろうか…?



今日の騒動だけじゃなく、あのお嬢さん方の後処理でここ数日仕事も滞り、魔力不足で慢性疲労を起こしていたのに、自分の興味を確実に優先して本館に行った事を詰めるべきか。



…いや、王子が顔を出して居たらより荒れただろう。



ここは一つ。こちらにも協力してもらおう。



にっこりという擬音がつきそうなぐらいいい笑顔を浮かべ言った。




「協力するのはもちろん吝かではない。がしかし残念ながら、解析を頼まれているものすら魔力が足りなくて進まないんだ。



これ以上は仕事を溜めることはできない。


どうしてもというのであれば、照合の魔力供給の協力をお願いできるかな?」



ただ働きではないが、こちらに負荷ばかりかけられても困るのは、この部門だけではない。



王子は苦笑いしながら、承諾し、横で関係なさそうに茶を飲んでいた局長も無理やり魔道具へと誘導する。



年寄りを思いやれ、人使いが荒いやら言っているが、深夜に仕事をしにくるやつが何を言っているとさっさと魔道具に魔力を注がせる。


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