第1話
舞台は現代の日本。毎日一人が消えていく。。。そんなNEWSを聞いた主人公刈谷は他人事としてスルーしていた。いつもの目覚め、いつもの学校、いつもの帰宅路、そんな日常がある時を境に一変する。。。
チリリリリチリリリリ
「…ん」
ああ、また朝か。
昨日は早く寝たのにまだ眠いな。
冬らしく、布団から出る顔が凍ったように冷たい。
布団をどかす。
「寒すぎるだろ…」
また意識が朦朧としているがいつものように支度を済ませ、リビングへと重い足を運ぶ。
カーテンを開け、日差しに目を細める。
いつものように朝飯を作り、いつものようにNEWSをつけていつものように食べる。
「今日は0℃を下回る気温となることが予想されており…」
まあ冬だしなと特に考えずにご飯をかきこむ。
「続いてのNEWSです。昨日の1人は未だに判明しておらず…」
「そりゃそうだよな」
今の日本では毎日一人が消えていく。どこの誰かも知らないやつが知らないところで消えていく。名前が分かれば儲けもの。知らないうちに消えていくなんて当たり前のことだ。
「俺が消えるなんてありえない」
国民全員が同じことを考えている。1億3000万分の1なんて計算するのにも滅入る確率だ。
「...」
誰も行ってらっしゃいを言わない。勿論、行ってきますも言わない。これもいつものこと。いつもの通学路を歩き、見慣れた校門を通り下足箱に向かう。
「お、おはよう」
「おう」
名前も覚えてないクラスメイトが挨拶してくる。
適当にあしらい乱暴に上履きを履き、教室のある3階へと向かう。
ガラガラガラ
乱暴に扉を開ける
カバンを乱雑に置き、椅子へと腰掛ける。
机に突っ伏していると直ぐにチャイムがなる。
「朝のHRを…」
退屈な時間が過ぎ、更に退屈な1限目がやってくる。
「寝るか」
目を開けると今は3限目。移動教室なのに誰も起こしてはくれない。
「はぁ…うざ」
人の心を持ち合わせていないアイツらに舌打ちをして支度をする。
「おい、刈谷何寝てんだ」
名前も知らない教師が注意するが、そんなの関係ない。もう学校には愛想を尽かした。もうどうでもいい。いっそ消えてしまえば…
一々学校で起きたことなんて覚えてない。気付けば帰宅路にいた。昼飯は何を食べたか、5限目はなんだったか、クラスメイトとは何を話したか、もうどうでもいいや。
鍵を開け靴を脱ぎ捨て家に帰る。夜飯は何食おう。毎日考えるのめんどくさい。
「コンビニでも行くか」
毎日のことだ。結局自炊はだるいし買って帰る。
「ありがとうございました」
「うす」
これが1日のまともな会話だ。
店員さんは大好きだ。分け隔てなく俺なんかにも優しく語りかけてくれる。
見慣れた帰宅路に袋を下げて帰宅する。
誰もいない家に帰り、夜飯を食べ風呂に入り寝る。毎日同じことの繰り返し。退屈この上ない。
「もう寝るか」
1日を振り返っても何も無い。そんな今日も寝ればまた明日がやってくる。おやすみ…
…しかしここで【例外】が訪れる。
「…ん」
朝か。意識が朦朧としているが、それは分かる。そしてもうひとつ分かること、それはいつもの目覚ましが鳴らないということだ。
そしてもうひとつ分かること、それは…
「いつもの天井じゃない…」
病人のような台詞を吐き、辺りを見渡す。
「知らない場所、どこだここ」
「こんにちは、刈谷響さん。」
知らない男が何故か自分の名前を知っていた。