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第10話『それで、ルーナ・リダ・サクハーラさんは私に何の御用ですか?』

オリヴィア様のお力もあり、何とか闇の世界から脱出した私は部屋の外へと飛び出した。


どうやら、ローリーさんは居ないらしく、私はそのまま家の外へと向かう。


が……家の外は大変な事になっていた。


「なんですか!? アレは!? 巨人!?」


家から飛び出した私の目に映ったのは、町を破壊しながら歩く巨大な人間だ。


いや、しかし人間というには顔のパーツとかが足りないし、手も腕との違いが分からない。


まるで子供の落書きだ。


「でも、なんで街を破壊しているんでしょうか……これがローリーさんの望み……? いえ。そんな事はあり得ないですね。では、第三者が引き起こした物と考えるのが自然でしょうか」


私は状況を分析しながら、まずは何をするにも人を呼ぼうと鞄から通信機を取り出して、セオ殿下を呼ぶ。


「テステス。こちらメイラーのミラです」


『ミラか!? ようやく繋がったな。今どこに居る!? 迷子になっているのか!?』


セオ殿下の言葉に、私はハッと別れる前にした約束を思い出していた。


そういえば次はセオストで会おうと約束していたんだった!


「申し訳ございません。セオ殿下。私は今、サルヴァーラの街に来ておりまして……」


『何!? サルヴァーラだと? どこだそれは……いや、僅かに……覚えが……な!』


「殿下? 殿下。よく聞こえませんが」


『……か! ……なよ! ……は、わたし……からな!』


「殿下! セオ殿下!! ……切れてしまいました」


私は話の途中だというのに切れてしまった通信機から、大きな音を立てながら歩く巨人へと目を向けた。


おそらくだが、通信の為に繋いでいる魔力の線が巨人によって奪われたのだろう。


見上げる様な巨大な体を維持する為にも、多くの魔力を必要とするだろうから……。


「体を維持する為に必要……? いや、でも」


私はふと頭に通り過ぎた思考について腕を組み、考え始めた。


何か、大事な事を見落としている様な気がする。


そう。大事な事だ。


「そう。そうですよ! 『魔導具作成の基本のき』に書いてあったじゃないですか。魔力は一か所に留まらず流動的に流れてしまう傾向にある。それゆえに霧散しない様に留める事が魔導具を作る基本であると」


私は脱出した家の庭でクルクルと回りながら、ブツブツと本の内容を思い出して呟いた。


そして一つの結論に至る。


「つまり、あの人形を支えるだけの力を持った術者。もしくは魔石等の媒介が存在するハズ。それを破壊すれば……あの人形を壊す事も可能ですね」


私はそう結論付けると、まずは人形に繋がっている魔力を探そうとして、何か黒い物が自分の周りで渦巻いている事に気づいた。


「……? なんですか? これは……! まずい!」


私は咄嗟に光と風の魔術を組み合わせて背中に翼を作り、空へと舞い上がった。


その直後、私が立っていた場所には黒い大人と同じくらいの大きさの人形が現れて、私が立っていた場所に飛び掛かっていた。


「今のを避けるとはね……癒しの魔術しか使えない子供って聞いてたけど、どうやらそれなりに動く事は出来るみたいね」


「貴女は……!? 何者ですか!」


「私は闇神教の人形遣い、通称クレイジードール」


「クレイジードールさん、ですか」


「そう。さんは要らないけどね」


「それで、ルーナ・リダ・サクハーラさんは私に何の御用ですか?」


「っ!? 私の名前を、何故!」


私は空に飛びながら、屋根の上に現れた女の人を見つめる。


その姿はかつて大事件を起こした犯人として伝わってきた人、そのままだ。


「世界国家連合首都に存在する大図書館への不法侵入及び、重要図書の窃盗。そして重要施設の破壊の容疑で全世界的に指名手配されています。ただし、現在貴女の手配書は何者かに改ざんされた形跡があり、記録としては残っていません。ですが、罪が消えた訳ではありません。さぁ! 盗んだ本を返して下さい!」


「驚いたわ」


「何がですか! 過去の偉人が記した書籍というのは非常に貴重な歴史資料なんですよ!? それを盗むなんて! 傷つけてはいないでしょうね!?」


「……ふ、ふふ。大丈夫よ。安心してちょうだい。アレは私のご先祖様が書き記した書。傷つけるはずがないわ」


「それは良かったです」


「それに、あの書籍はね。盗まれた物なのよ。本来は私が持っているべき物なの。だから私が罪人になる事がそもそもおかしいのよ」


「そういう事でしたか。これは失礼しました」


「ふふ。素直な子は好きよ」


「では」


「ん?」


「そちらの件も含めて、国際連合司法裁判所で全てを決着しましょう! 何が正しいのか! このサルヴァーラで行っていた事も含めて、全てを明るみに出し、正しい判決を!!」


結論は出たと、私は風の魔術を使いルーナさんを捕縛しようとする。


しかし、ルーナさんは自分の前に黒い人形を作りだして、私の捕縛魔術とぶつけ合わせながら、自分自身も人形に掴まって別の場所へ逃げるのだった。


「逃げるのですか!?」


私は翼を動かして空を飛びながらルーナさんを追う。


しかし、何故かルーナさんは逃げるばかりでこちらに反撃をしようとはしていなかった。


しかも遥か向こうにあるルーナさんが作り出したと思われる巨大な人形からも遠ざかってゆく。


何が目的なんだろう……?


私は疑問を覚えながらも、そろそろ魔術が切れそうな気配を感じて翼を消しながら屋根の上に降りて、懐から魔力補給用の飲み物を取り出し、飲もうとした。


だが、その瞬間、ルーナさんは勢いよく振り返ると私に向かって手をかざしながら叫ぶ。


「やっぱり実戦経験は足りない様ね! お嬢ちゃん!!」


「えっ」


ルーナさんの声が響くと同時に私の影から二体の人形が飛び出してきて、私に絡みついた。


手に持っていた飲み物は屋根の上に落としてしまい、開いた蓋から飲み物が零れる。


しかも締め付けてくる人形だったものは、私の体を動かせない様にきつく絡みついて、指くらいしか動かせない様になってしまった。


「くっ、苦しい」


「あら。ごめんなさいね。でも私は貴女たちみたいな便利な力を持ってないから、このまま縛り付けて気絶させるしかないの」


「やっぱり、貴女は……魔術を使えない」


「あら。そこまで見抜いていたの? 本当に貴女は素晴らしいわね」


ルーナさんは私が囚われている屋根の上まで人形に抱きかかえられたまま飛んでくると、屋根に降りて、一歩一歩と私に向かって歩いてくるのだった。


カツン、カツンと歩くたびに屋根が音を立てる。


「本当は貴女を神の器として使うつもりだったけど、それは勿体ないわね。知識、洞察力、記憶力。何をとっても一級品。その力、神の為に使うべきだわ」


「わたし、は……ぼうけん、しゃに」


「ふふ。可愛い。まだ抵抗するのかしら。でも、それは無意味だわ。早く落ちた方が楽に……「『島風!!』」っ!? バカな!何故この場所が!」


人形に締め付けられて、意識を失いかけていた私は、どこかで聞いた事のある声が響いた次の瞬間に苦しみから解放されて、空に投げ出された。


そして、そのまま屋根に落ちるところを優しい腕に抱きとめられる。


「ミラ。遅れてすまないな」


「いえ……ですが、わたし、ひとりでも……悪い人を……」


「あぁ。分かってるさ。ミラは凄い子だ」


「後は任せろ」


「くっ、あの人形は災害なのよ!? それを放置してくるなんて、何を考えてるの!?」


「無論アレも破壊するさ。だが、優先順位って奴があるだろ?」


オーロさんは穏やかに喋りながらも、どこか怒りを滲ませながら、ルーナさんに向かってその怒りをぶつけるのだった。


「だから……これ以上は何も奪わせるかよ」

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