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第33話 静寂の夜

 医務室のベッドの上。結局、言い合いを耳にしながらベッドに運ばれた。でも、最後の最後は2人の手で僕に布団をかけていたのを見れて、ちょっと嬉しかった。

 なんでだろう。僕に利益があるわけでもないのに、なんで嬉しく思えたんだろう。

 2人で一緒に何かをやっていたから。きっとこれが答えなんだろうけど、それがどうして嬉しいという感情になるのか。それが分からなかった。


「……あっ」


 答えの出ない自問に頭を悩ませながら、僕は右へと寝返る。その正面には、美雪さんが眠っていた。


「あっ、そうだっけ。クロッグに吹っ飛ばされて……?」


 開けられていた医務室の扉から、クロッグが入ってきた。その体は少しボサついていて、濡れた跡もある。おそらく誰かがクロッグを洗ってくれたのだろう。


「クロッグ、おいで」

「……ニャッ!」


 僕の言葉を無視して、クロッグは美雪さんの横へと飛び乗った。そしてそのままクタンと寝そべって、美雪さんをただ見つめていた。

 猫であって、バケモノでもある。魂の集合体ならば、もしかしたらクロッグには猫以上の心があるのかもしれない。もしそうなら、今のクロッグは何を思うのだろう。

 飼い主である美雪さんを傷つけたことへの謝念か、もしくは後悔か。僕には分からないけれど、ただ言えるのはクロッグが申し訳なさそうな目をしているということだ。

 目は口ほどに物を言う。この言葉は間違いではないみたいだ。


「クロッグ、美雪さんは大丈夫だよ」

「ニャー……」


 ほんとに、猫だな。たった一言聞いただけで寝転がってリラックス状態になっちゃうとことかさ。


「にしても、することないなー……」

「おーい、飯持ってきたぞ……ん、クロッグ?」

「テイラ、急に止まるな。俺じゃなきゃぶつかる」


 中へ入ってきたのはテイラと、姿は見えないけど声でマスケルだとは分かった。

 どうやら晩ごはんを持ってきてくれたみたいだけど、美雪さんのもとに眠るクロッグを見てテイラが立ち止まったみたい。それでマスケルが怒ってるけど、それくらいで怒るのもどうかと思うけど……。


「ん……ん〜! 僕はもう大丈夫だよ。ほら、もう歩けるくらい!」


 ベッドから飛び起きて、僕はもう大丈夫だと見せた。


「おい無茶すんなって。ま、元気なら良いけどよ」

「飯はどうする? 食えるか?」

「うん。でも……美雪さん、そろそろ起きるよ」


 僕がそう言うと、不仲な2人は顔を向き合わせながら同時に首を傾げた。

 そんな2人を差し置いて、美雪さんは目を開けてバッと起き上がった。


「こ、ここは?」

「ほ、本当に起きた……」

「どうして分かったんだ?」

「気絶から起きる際の、激しい吐息があったからね」


 心を学んでいるうちに、なぜか得た知識。でも、どこで知ったんだろう。色々と調べているせいでそんなこと覚えてないや。


「あら、クロッグ……申し訳ありませんわ、わたくしのせいです」

「……次はない。あと、飯。食っとけ」

「おいおい、適当すぎねぇか?」

「一応は女性なんだから気配りとか……あっ」


 狼に睨まれているかのような殺気を感じて、僕はゆっくりと美雪さんの方を向く。つい口ずさんだ、「一応は女性」という言葉が癪に触れてしまったんだなぁ……。


「い、いや今のは言葉のあやってやつで――」

「問答無用ですわ。『氷結』」


 一瞬にして、僕は凍らされた。肌がヒリヒリと痛む。動こうにも、金縛りにあっているかのように自由が効かない。


「おいアラン⁉︎」

「待ってろ」


 え、なんかマスケル……。氷のせいで視界が歪んで見えるけど、銃構えてるように見える……。

 ん? あれ、引き金引いてるよね、ねっ⁉︎


「安心しろ、輪郭に沿ってちゃんと撃つ。俺を信じろ」


 し、信じる……。そう、だよね。仲間なんだから、信じないと!


「それじゃあ……ふぅ〜……」


 あれ……撃ってこない。もしかしてまだマスケル、撃つのに戸惑ってるのかな。


「……ダメだ、人間相手はまだ……」

「ふふ、すみません。お仕置きが過ぎましたわ。はい、解除いたしましてよ」

「ドワっ!」


 いきなり僕を凍らせていた氷が消え失せ、僕はバランスを崩した。


「まだ撃てないか」

「……悪い、気分が優れない」

「あっ、待って……」


 マスケルのあとを追いかけようと思ったけれど、全身が冷えてしまったせいか、僕の意識は朦朧としてしまった――

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