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第9話 光

 僕の目の前に広がっている光景は、散らばるナイフと身体中血だらけで談笑している仲間達だった。


「え、っと?」

「あー来た来た」

「えへへ! エリス、頑張ったんだよ」

「まったく。本当にすごい、女の繋がりってのは。入ってすぐのエリスと息ピッタリってのがな」

 

 何がどうなって、こうなっているのかは分からないが、エリスとプレイアさんが協力して突破口を開いたということはよく分かった。


「説明の前に、これ消しちゃうね」


 プレイアさんが手を叩くと、血で染まっていた彼女達の服が、いつも通りの綺麗な状態み。いや、よく見ると少し濡れていた。


「エリスの超能力で花瓶のお水で服を濡らして」

「私がその水の色を、差し込む日光の色を変えて真紅にする」

「そしてエリスがナイフを落として、アイツに催眠術をかけたの!」

「それで、アイツの視界だと俺たちは刺されたように見えるって寸法だ」


 なんとなく状況は把握できた。だけど、だとしたらオスマンさんのスーツが血で染まっていた理由が分からない。


「なんでオスマンさんのスーツは血がついてたの?」

「え、それは知らない」

「うん。エリスは攻撃してないよ?」

「それは俺だ。発砲したからな」

「えぇぇぇっ⁉︎」


 マスケルが発砲していたのは予想外だった。でも、そのおかげで助かったのは事実。僕は落ち着いた鼓動をたしかめて、息を吸った。


「発砲したんだ」

「あっ……いや、急所は外しっ⁉︎」


 僕は右手にペンを握って左手で何かを書くそぶりをしてみせて、その左手をバッとマスケルの前に出す。それだけなのに、彼は目をギュッと瞑るくらいに驚いた。


「アッハハ! マスケル、よく見なよ」

「ん? なっ、花⁉︎」

「うん。ありがと、マスケル」

「覗き魔にしては心遣いできるじゃん」

「え? のぞきま?」


 まだ幼いエリスがいるというのに、プレイアさんってば言葉選びに躊躇なくそう僕を呼ぶ。


「エリスちゃんは気にしなくて良いのよ〜? 」

「もう許してやれ。あれは事故だ」

「えぇ〜? まあ……でも、今回だけだかんね!」

「わかってますよ、僕だって覗くならもっと上手くやりますもん」

「え?」


 い、言い間違えた。まずい、何か言わないとまたイザコザが起きる。


「いや違くって! 冗談です、冗談! もう、やだなぁ〜!」

「え、絶対マジだったよ今の」


 流石に無理のある言い訳に、嘘だとすぐにバレた。苦笑いをするしかない。


『あらあら、愉快な友人ですわ。よろしければ、お茶でもどうです?』

『ワフっ!』


 そんな僕達の後ろから、お淑やかなあの声と犬のような鳴き声がした。


「美雪さんと……その犬は?」

「ふふふ、昔飼っていた犬です。先程のオオカミさんの亡霊を使って実体化させたのです」

「それって、良いんだっけ?」

「まあ、良くはない……けど、可愛いし良いんじゃない?」


 僕はおすわりして舌を出しながら息をしている黒いシェパードをギューっと抱きしめた。


「……で、あなたは?」

「あ、そうでしたね。わたしは、花岬 美雪と申します。それで、あなた方は……」

「私はプレイア。ヒーローで、ヒーロー名もプレイアです」

「えっと、アリス・ユリーです。みんなはエリスって呼ぶし、エリスもエリスって呼びます!」

「俺はマスケル。今は警察官だ」

「プレイアさんにエリスちゃん、マスケルさんですね。では大広間へ。執事のオスマンがご迷惑をかけてしまったお詫びをしたいので」


 犬を連れて、美雪さんは先に歩いて行く。僕達は少し向き合って、彼女について行くことにした。


「ていうかさ、いつまでもぎり服なの?」

「あっ」


 その言葉で、ようやく僕は着替え忘れていたことに気がついた。でも戻るわけにもいかないし、開き直ってこのままでいることにした。

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