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第6話 行方知れず

一方その頃、帝都防衛華荘団色組の一同は次のライブについて、劇場の楽屋で机を囲むように話し合いをしていた。


「ねぇ、あのおじちゃんは入れないの?」

「フン! 覗き魔なんか入れたくない!」

「わざとじゃないみたいだ、許してやれ」

「マスケル、女の子の心はそう簡単には落ち着かないんだぜ? まっ、女に疎いお前には分からんか」


 どうやら、プレイアはアランが下着姿を見てしまったことをまだ許せてないらしい。そんな楽屋の雰囲気を、勢いよく開けられた扉の音が壊した。


「な、何⁉︎」

「おう、マッチュか。どうしたよ、血相変えて」

「大変です! アランさんのGPS反応が……途絶えました!」

「『えぇっ⁉︎』」


 マッチュと呼ばれた、ピンク色の髪をした事務官姿の女性がその報告をするとプレイアを含めた全員が大声を上げた。


「途絶えたって、どこで⁉︎」

「プレイアのお姉ちゃん、心配してるんだ」

「あっ、いやえっと……心配かけるヒーローなんてダサいって言いに行きたいだけだし!」

「そういうのは良いから。で、どこで途絶えたんだ?」

「それが……花岬邸です」


 マッチュがそう告げると、全員は目を合わせて息を飲んだ。


「本当に?」

「はい。おそらくは……あのため、だとは思うのですが」

「いや、だとしても反応は途絶えない。扉を開放したまま、この世界とあの世界を繋げるからな」

「だとしたら……扉を閉められた?」

「とにかく、急いでください! もしそれが事実なら、かなり危険です!」

「分かってるさ。オメェら、あのバカ連れ戻してこい!」

「『イエッサー!』」


 モスイの指示で、全員は楽屋を飛び出して、急いで花岬邸へと向かう。一般人にも目立ってしまうが、極秘裏にするほどの事態でもない。だから気にすることなく走り抜ける。この光景をアランが見たらどう思うだろうか。そんな思いが、全員の胸の中に宿っており、微笑みが浮かびながら。




 〜花岬邸〜


 全員が息を切らしながらようやく着いた、花岬邸の門前。だが、どれだけ開けるように叫んでも門は開く気配がない。


「どうなってんの……?」

「こうなったら、力づくだ! どいてろ!」


 マスケルは懐に収めていた拳銃を手に取り、迷うことなく門に銃弾を浴びせる。だが、その弾は傷つけることなく、弾き返される。


「な、どうなってんだ?」

「任せて! エリスの超能力で……! ハァァ!」


 エリスの本当の異能力、『超能力』で固く閉ざされた門がゆっくりと開いていく。


「エヘヘ!」

「すっご〜い……」

「感心してる場合じゃない。急げ!」

「そうだね! あの覗き魔に、ダサ男と呼ぶまで!」


 私欲も混ざっているが、アランを救いに走り出す3人の足。まっすぐ伸びた、花岬邸の入り口までの道。その間に、一方的にメイドが邪魔立てをしてくる。枯葉やらお皿やらナイフやらが飛び交う。


「ここはエリスに--」

「いいよ。私がやる! それ!」


 思いっきり暴れようという目を見せるエリスを遮り、太陽から光を集め、プレイアはその光をメイド達に放つ。あまりの眩しさにメイドは動けない。その隙に3人は入り口まで駆け込むと、マスケルが扉を蹴破った。


「べ、弁償代とかヤバそう……」

「金の心配よりも今はアイツだ」

「そうだよ! あんなとこにずっといたら、死んじゃうんだよ⁉︎」

「分かってるよ」

『やはり来ましたか』


 その声と共に、花岬邸の電気が全て消された。ただ、階段と向き合う場所にあるステンドグラスから差し込む日光が、その声の人物の顔を照らしていた。


「オスタン、さっさと鍵を開けなさい。何の真似か知らないけど、エリスの言うことは聞けるでしょ?」


 エリスはオスタンに向かって上から目線で物申した。


「申し訳ありません、元お館様。ですが、今はご令嬢様がわたくしめのお館様であります故、その願いは聞けませんのです」

「そう。なら、これでお話しできる?」


 言うことを聞けないと言われ、エリスは超能力を使い無理矢理鍵を奪い取ろうとした。だが、鍵を手にしても一瞬で消え失せてしまう。どんなに手にしても、一瞬で消えてしまうということを繰り返す。


「フフフ、わたくしの異能力をお忘れですかな?」

「時を操る能力だっけ? でも前までそこまで便利な能力じゃなかったはず……」

「そのはずだ。スキルアップ不可にされてたはずだからな」

「わたくしも、亡霊の力を得たのです」


 オスタンが右目を右手で覆い隠し、ギュッと握りしめてからその手を離すと、右目を中心に、クモのような痕が出来上がっていた。


「なっ、何の真似だ⁉︎」

「フフフ。お館様を奪ったあなた達……とは言っても、残るはモスイただひとりですがね。交換条件です。モスイの命をくだされば、アラン様は解放します」

「そんなに憎いの? あの事件が。だったら恨む相手間違ってるよ!」

「ねぇねぇ、あの事件って何?」

「……あれは、20年前の真夏のことでした--」


 オスタンが口にしたのは、アランも知らないとある大事件のことだった。それは、哀れで儚い、たった3日間の大戦争のことだ--。

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