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第3話 惨事

 僕は全員の痕を見てみたくて全身が煮え返りそうになるほど心を熱くしていた。

 地下室の階段を登り終え、僕は左に曲がってすぐにある楽屋へと入った。中には、まだ着替え中で下着姿のプレイアさんがいた。


「え、あ、あれ⁉︎」

「な、ななななな、何見てんのこのスケベヤロ~~~~っ!」

「アイダッ!」


 僕の右頬に、プレイアさんの平手打ちが炸裂した。おそらく綺麗なモミジ模様が出来上がっていることだろう。ジンジンと痛みと熱が伝わる。


「え、えっと決してそういうつもりじゃ--」

「言い訳は良いから……さっさと出てけ~っ!」


 なんとか誤魔化そうと思ったが、僕はプレイアさんに思いっきり廊下へと突き飛ばされた。

 その瞬間、肩のあたりに犬のような痕があるのが見えた。でも、すぐに扉が閉められてしまった。その扉には、[着替え中]と書かれた看板がかけられていた。どうやら興奮のあまりに見落としていたらしい。それじゃあ勘違いされるわけだ。


「おい大丈夫か?」

「あ」


 その場へマスケルが訪れた。どうやら突き飛ばされたところを見ていたらしく、その顔は少し苦笑いだった。


「あはは、お恥ずかしいところ見られた」

「まったく。覗きをするにしても大胆すぎだ」

「いやそうじゃなくって! 本当に誤解なんだって」

「あんなデカデカと着替え中って書いてあるのに、見落とすか?」


 それ言われると、そうなんだけど。自分でも小っ恥ずかしくて言いたくないんだけど。でも誤解されるなら言ったほうが良いよね。

 でも、マスケルの痕も気になる。でもまずは誤解も解きたい。


「あ、あのさ。服脱いで間違えちゃったんだよね」

「……は?」

「あ、いや……なんでもなーいっ!」


 色んな思惑がこんがらがった結果、まさかの意味不明発言になってしまい、僕は真っ赤になっているであろう顔を両手で覆いながら走り去っていった。

 その僕の襟をマスケルが掴むも、全力疾走する僕の勢いに負けて前のめりに倒れる。僕も彼の体重に引き寄せられて後ろへと倒れる。


「アイってててて……」

「わ、悪い。ケガないか?」

「うん……」

「どうした? なんかあったなら話聞くぞ」


 真面目な瞳をして僕に尋ねるマスケル。そんな彼に、こんなこと言って良いのだろうかと迷いが生まれた。

 でも、マスケルなら笑ってはくれるはず。そう思って、冗談混じりに言ってみることにした。


「いや~、マスケルの裸が見たいなぁ、な~んて」

「……」


 マスケルはその言葉を聞くなり、身震いして僕からそそくさと距離を置いた。


「いや冗談! ちょ、冗談!」

「……本当に冗談か?」

「本当の本当! すぐに信じないでよ、特に警察官が!」

「うっ、痛いとこ突いてくるな」


 冗談の通じなさ。これはドラバースよりも純粋の証にはなりうるかも。


「で、まあその……なんか、痕ないの?」

「あと……? なんのことだ?」

「あ、えっと。桜に乗れる証の」

「あ~。これか?」


 マスケルは警官服の右袖をまくると、そこには黒毛の中に白毛が混じり、狼の横顔のような痕を作っていた。


「そうそう! へぇ、宇宙人だと毛並みで現れるんだ」

「まあ俺みたいなタイプだとな。テイラみたいな地肌のやつなら地球人と同じくアザみたいな痕だ」


 でもテイラと一緒にいたのに、痕のようなものなんて見たことがない。どうしてだろうか。


「この痕はな……って危ない。これは機密事項だ」

「え、もしかして変な声にみちびっ⁉︎」


 「変な声に導かれて痕ができたの?」

 そう聞こうと思っただけなのに、マスケルは咄嗟に僕の口を塞いだ。


「言うな! 絶対にだ!」

「う、うん……!」


 あまりの突然の行動に、僕は瞼を見開かせながら頷いた。


「まったく。まあ、お前の言った通りだ。それだけ覚えておけ」

「分かった」


 でも、これで納得できた。みんな、謎の声に導かれて痕を手にしてる。それだけ分かっただけで充分だ、僕だけ特別ってのは嫌だから。


「おぉ~い、そこの覗き魔ヤロー」

「へ?」


 地下室の階段から登ってきたモスイさんが、僕を見るなりそう呼んだ。

 でも、さっきのことを知らないはずなのになんでそう呼ばれているのか分からず、ポカンと口を開けざるを得なかった。


「さっきプレイアのやつから連絡あってな。アランに覗かれたから説教してくれとな。そういうわけだからマスケル、コイツ借りてくぜ」


 僕は襟を引っ張られて、ズルズルと事務室裏へと連れて行かれた。


「なるべく問題起こすなよ。後が大変なんだ」

「いやだからそのぉ……見落としてたっていうか」

「まあそんな気はしてたがな。ったくよぉ、成功後の酒がまずくなる」


 そう言いながら、モスイさんは日本酒を瓶ごと口に運ぶ。しかも美味しそうに。


「まあだからぁ~、そういうこった」

「はぁ……。えっと、で?」

「あぁ~? あー、後は好きにして良いぞ」

「じゃあ、これで失礼します」


 結局何が何だか分からないまま、僕は出ていった。頭は、はてなマークでいっぱいだ。そんな頭を冷やすため、僕は外に出てあてのないブラつきでもしようと考え、服を着替えることをすっかり忘れて外に出た。

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