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30.最強の聖女にしてあげよう

 盗賊たちのアジトは山岳地帯の奥地にあった。

 途中の山荘を中継地点として、さらに進むこと六時間弱。

 古びた洋館が顔を出す。

 そこには盗賊集団のボスを含め、総勢二百人の盗賊たちがいた。

 専用の奴隷庫には、近隣の村で捕まえた女子供を拉致、監禁している。


「貴族との商談は明日だ。それまで絶対に逃がすなよ」

「へい!」

「そういえば、何人か戻ってねーな」

「みたいっすね。しょんべんでもして遅れてるんじゃねーですか?」

 

 暢気に語り笑う部下と、呆れる盗賊のボス。


「間に合わなかったらぶっ殺しとけ」

「了解です。あ、戻ってきたんじゃないっすか?」


 玄関付近から音が聞こえる。

 しかし慌ただしく、少々騒がしい。

 音は徐々に近づき、ボスがいる部屋へと迫る。


「なんだ? この音は――」

「よいしょー!」


 部屋が半壊する。

 一瞬で崩れ破壊された建物と、残った部屋でボスが立ち上がる。


「こいつは……」

「見つけたよ。ライカ! たぶんこの人がボスじゃないかな?」

「だな」

「なんだてめぇら?」

「通りすがりの正義の味方だ。絶賛子守の最中のな」

「子供ってあたしらのことじゃないだろうな! もう立派な大人だぞ!」


 ワチャワチャと緊張感なく話す俺たちの背後には、倒れた盗賊たちの山がある。

 すでにここへ来る途中の盗賊は全滅させた。

 

「ライカ、捕まってる人達を見つけたわ。けが人もいるみたいよ」

「わかった。エリン、頼めるか?」

「は、はい!」

「クーラン、あんたもこっち手伝いなさい」

「はいはい。あとは任せたぜ」


 クーランとシルフィーはエリンを連れ、囚われていた人々の方へと向う。

 残った俺たちは盗賊のボスと、共に話していた手下の盗賊に視線を向ける。

 ボスは手下に命令する。


「――殺れ」

「了解っす」


 手下はナイフを取り出し殺気を向ける。

 中々に鋭い殺気、そして動きも早い。

 が、相手が悪かったな。


「君は眠ってて!」

「ぐはっ!」


 アナリスは聖剣を取り出すこともなく、ナイフを持った手を払い、首を叩いて昏倒させた。


「すげぇ……」

「あんなもんじゃないぞ。それと、次は君の出番だ」

「お、おう! 任せとけ!」


 と、勢いよく啖呵をきってはいるが怖いのだろう。

 僅かに手足が震えている。

 俺は彼女の背中を軽く押す。


「大丈夫だ。俺が君を、最強にしてあげるから」

「――おう!」

「……おい、舐めてるのか? まさかそのガキに俺の相手をさせる気じゃねーだろうな?」


 盗賊団のボスは壁に立てかけてあった大剣を手に取る。

 俺の背丈と同じくらい長い大剣を軽々と持ち上げ、片手で振り回す。

 おそらくレベルは70近いはずだ。

 

「ちょっとは手練れみてーだが、俺様をそんな雑魚どもと一緒にするんじゃねーぞ」

「それは戦ってみたほうが早い」

「そうか? だったら遠慮なくぶっ殺してやるよ!」


 ボスは大剣を振りかざし、エレンに向けて振り下ろす。

 エレンは前に出た。

 臆することなく、かの大剣を受け止める。


「何!?」

「――主よ、我が拳に聖なる光の加護を」


 彼女は素手で受け止めた。

 『鉄槌の祈り』――聖なる力を拳に付与することができるスキル。

 その拳は邪悪を払い清める。

 聖剣ならぬ、聖拳と化す。


「こいつ!」

「よくもあたしらに酷いことしてくれたな!」


 エレンが殴り掛かり、ボスがたじろぐ。

 レべル差はおそらく倍以上。

 本来ならば手も足も出ずに敗北するのはエレンのほうだ。

 運がいいというのは、俺がいたこと。

 今、彼女のステータスは、レベル100の俺と同じだ。


「行け。悪者に想いっきり叩き込め」

「おおおおおおおおおおおおお!」


 エレンの拳はボスの大剣ガードを粉砕し、そのまま鳩尾にクリーンヒットする。

 聖なる拳の一撃は衝撃が内部に浸透し、そのまま脳を揺らした。

 白目をむいたボスが倒れ、立っていたのは弱者であるはずのエレンだ。


「か、勝った? 本当にあたしが……?」


 彼女は呼吸を乱しながら、驚きながら俺に視線を向ける。

 

「言っただろ? 俺が君を最強にするって」

「――!」


 この時の彼女は、まるで夜明けの光のように眩しい笑顔を見せる。

 ほんのり頬を赤く染めながら。

【作者からのお願い】

本日の更新はこれがラストです!


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[一言] ]_・)双子聖女姉、味を占めそう(笑)
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