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誇り高き生徒達

自分が勝手に動いているという自覚はある。けれどもそれが間違いだと思えなくて、本当に支配されている感覚だ。


これが洗脳。怖いほどに感情が昂って命令以外のことをやる気にはなれなかった。


黒煙の厚い壁を速度落とすことなく破っていく。後ろを見るつもりなどないが、やはりヒバナは追いかけてくるのがわかる。



「Aクラスの、生徒と、合流…」



命令に囚われた俺の頭の中はもう誰の声も聞こえない。やがて黒煙が薄くなり始めたと思えば一気に外へと駆け抜けた。



「生徒と、合流」



心が燃える俺は同時に身体能力も高まっている。近くの建物の屋根部分に特刀束縛の縄を引っ掛けると地面を足で蹴って一瞬で屋根に登り詰めた。視覚に集中した俺はAクラスの生徒達を探す。



「あれは…違う。……そっちも違う」



普通なら見えない場所でもハッキリと見えてしまうのはきっと強い言霊が俺を動かしているからだ。すると黒煙から遅れてヒバナが出たのが見える。


ヒバナが表に現れた時、黒煙は風に巻かれて消えていった。生み出した主が居なくなったことによって形が保たれなくなったらしい。ヒバナは屋根に登る俺を見つけると飛躍して距離を縮めてきた。



「兄ぃ!!」


「……邪魔だ」



怒るヒバナの手と腕には牙のような鋭いものが生え始める。きっとこれに刺されたら簡単に体を貫通するだろう。


狭い屋根部分で俺は迎え撃つために特刀を構えた。そしてヒバナの腕と俺の特刀がぶつかり合い激しい高音が辺りに響く。このままではカムイの命令を遂行できない。


目の前にいるカゲルは俺の邪魔をする敵。そう完全に認識した俺は本気で殺そうと体に力を入れた。



「生徒に会う…!」


「小賢しい!!綺麗事で片付けるな!お前は、私達兄弟が始末する!!シンリン!」



特刀でヒバナの腕を止めた時、俺の目の前には口を大きく開けて涎を垂らすカゲルの姿。喰われる。こいつも俺を本気で殺そうとしている。


それを表すには十分なくらいの殺意が込もっていた。でも俺は全く怖くなかった。……洗脳が解けたのだ。



『ワタクシ脚力が凄いの。何かあったらワタクシを呼んでくださいまし。すぐに駆けつけて救出してみせますわ』


「レオン」



誰かが俺の所へ突っ込んだと思えばそのまま俺を抱えて別の建物に飛ぶ。



「ただいま戻りましたわ。先生」


「ふっ、よく戻った」



今の彼女の笑顔は貼り付けたものには見えない。本当に安心したような笑顔のレオンだった。



『あたしさ、強い人好きなんだ。あたしはもっと強くなりたいんだよね。ヒーローみたいに』


「リンガネ」


『手を伸ばせば助けられた。でも俺は手を伸ばさなかった。でも先生族が守ってくれるのであれば、俺は先生族の力となる刀になろう』


「カムラ」




俺が急に目の前から消えたことによって一瞬の思考を止めてしまったヒバナに2本の特刀が体に差し込まれる。リンガネとカムラが両方から斬撃を喰らわした。



「ああああああ!!」



痛さで悲痛の声をあげるヒバナの腕の牙はみるみると縮んでいく。



『討伐アカデミーの人達はみんなかっこよくてまるで王子様みたいで…。だから僕は自分を信じて生きたいからカゲルを討伐するって決めてる』


「カナト」



それに追い打ちをかけるように後ろからカナトの特刀がヒバナの頭に刃を入れた。



「今っすよ!ハルサキさん!」



ヒバナに特刀を入れたまま3人は下に避難するように落ちて行く。それを巻き取るように特刀束縛の縄を器用に扱ったのは彼女だ。



『悪役は死ぬ。……でも私は生きる』


「ミロクニ」



落ちた3人を救助したミロクニに変わって飛び出して来た人物は見たことのある鞭を使って行動できないヒバナを束縛する。



『………貴方もいずれわかる。わからなくても見つかる。カゲルを倒す理由が』


「ハルサキ」



そして電撃を走らせた鞭に触れたヒバナは口から血を吐き出して屋根から落ちた。ハルサキは束縛を解かずに極めつけの一撃として鞭を振りかぶり勢いよく地面に叩きつける。



「トドメを頼む!委員長!」



『逃げるのはダメです!逃げたらAクラスのみんなで捕まえに行きます』


「アサガイ」



俺の呟きと共に空から舞い降りたのはアサガイ。身動きすら取れないヒバナの心臓目掛けて特刀を振り下ろした。血の花がアサガイに飛び散る。それでも彼女はヒバナを見つめて何かを話しているようだった。



「我が、兄…よ…」


「ごめんなさい。でもシンリン先生は渡せません」


「お前達の、ものでは…」


「シンリン先生は私達Aクラスの先生です」


「ああ…ああ…すまない、役目果たせ、なかった」

 


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