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認めざるを得ない執着心

男子生徒にそう告げた俺はその場から立ち去ろうと動き出す。



「まるで経験あるような言い方すんだな」


「……俺は一度死んでる」


「あっそ。…ほら」


「わっ!何これ!」



ヒマワリは男子生徒に何かをされたみたいで声を上げた。俺は振り向くと白い布を口に当て、目元には兵器のような眼鏡を付けるヒマワリがいる。思わず驚き声を出してしまいそうだった。



「サポート用ゴーグルとマスクだ。それやれば手、空くだろ」


「ありがとう!」


「ほらお前も」


「すまない」



俺は片腕で口元を覆いながら眼鏡を付けてもらう。これで目が染みる心配はないだろう。それに加えて白い布の紐を耳にかければ特刀を持つ片腕が使えるようになった。



「これでみんなの所に行けるね!」


「ああ。お前はすぐに避難しろ。この先にはセンリが居る簡易施設が設けられている」


「……わかった」


「それと」


「何だよ」


「あまり彼女に執着するな。あいつを壊して失いたくないのであれば離れるのも大事だ。以前、カムイ王都の女中がこんな話をしていた。押してダメなら引いてみろと」


「余計なお世話だ」


「俺は生徒を守らなければいけない。カゲルだけでなく、傷つけようとする奴からも」


「……もう、しねぇよ」



するとずっと我慢していたのが溢れかえってしまったのだろうか。男子生徒は震えながら涙を流す。その様子を俺はジッと見つめ、ヒマワリは眉を下げていた。



「夏華はもう俺を見ないってわかってる。でも、でも認められなくて…」


「それで付き纏っていたのか」


「けれどあいつらが目の前で喰われて死んで、簡単に認められた。ずっと知らないふりしていたけど夏華は俺を怖がっている。それが十分な認める材料だ…」


「時が過ぎたら謝れ。俺がちゃんと朝街夏華を連れて帰る」



俺は男子生徒の返事も聞かずに歩き出す。右足に鈍い痛みが走るけど、早くこの場から離れたかった。後ろからヒマワリが追いかけてくる。もしかしたら彼女もアサガイの事情を知っているのかもしれない。


俺は右手に持つ特刀を強く握りしめて横に振りかぶった。すると黒煙は上下に分かれて視界が少し良くなる。



「行くぞ」


「うん」



もう男子生徒の様子はわからない。それでも俺達は進まなければならないのだ。まずはAクラスの生徒と1人でも合流する。俺の中で強い風が吹き荒れた。


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