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ピクニック気分 【リコン学長、ハルサキとリンガネ班】

「降ろせよ学長!何であたしまで連れ去られなきゃ行けねぇんだよ!?」


「ふふっ、せっかくなら3人で行きましょう?」


「今はピクニックじゃねぇ!」



いつもより口が悪くなっている女、リンガネを着物を着ているのにも関わらず片手で担ぐリコン学長。目を離した隙に離れるのではないかという心配から来た行動だ。


それは生徒を怪我させて取り乱したシンリンのようである。22歳になっても2人の教員に俵担ぎをされるリンガネは恥ずかしくて堪らなかった。



「でもハルサキはちゃんと静かに着いてきてくれてるけど?」


「っ……」


「あいつは別だ!自己主張しないし!降ろせ!」


「暴れない、暴れない」


「尻を撫でるな気持ち悪い!」



全く緊張感のないリコン学長の後ろを走るハルサキの顔は若干赤に染まっていた。とある理由から始まった若者の恋は30代のリコン学長には気付かれていない。それはハルサキにとっては有り難いし、言うつもりも無いのでこっそりと恋を育てることが出来る。


そんな事をハルサキは思いつつも特刀には手をかけていて警戒は怠ってない。それに比べてリンガネは足を激しくバタつかせている。



「つーかどこ行くんだよ!」


「反社会政府のボスの所よ」


「ボス…?」


「そんなん居たのか!?」


「勿論。こんなに大勢を束ねられるのはボスがいてこそでしょう?私の役目は頂点を潰すことよ」



急に真剣な声になるリコン学長に生徒2人は唾を飲み込む。反社会政府のことは日本で様々な記事で書かれることが多い。


しかしその組織の頂点に君臨する者は崇拝者にならないとわからない状態だった。



「どうせならアカデミーのボス対反社会政府のボスで戦いたいと思って。貴方達は私を運んでくれれば良いの」


「運ぶ?それは何処に…」


「ふふっ、内緒」


「っ//」


「うわーアザと」



3人は長い階段を登ってボスと言われる奴の部屋まで進んでいく。和風な建物は構造がアカデミーのわうなビルとは変わっていて、地図を完璧に暗記しないと辿り着けない位置だ。


ハルサキは後ろを着いていきリンガネは担がれているので心配は無いが、道はリコン学長の案内がないと迷ってしまう。


しかしそんな不安は無用らしく、止まることなく同じスピードで走るリコン学長は2人にとって頼もしい存在だった。



「でもその部屋に居るとは限らねーんじゃないのか?」


「そうね。その時は3人で探しましょ」


「……わかりました」


「とりあえず降ろせ」



階段を登り切った先には何本もの廊下が存在する。何処を通れば目的地に着くかなんてハルサキとリンガネは覚えていなかった。


それでもリコン学長は止まらない。きっと反社会政府の本拠地の隅から隅まで覚えているのだろう。



「…流石だ」


「ん?どうかした?」


「いっ、いえ何でも」



少しだけ会話を交わしながら、何度も曲がって何個もの扉をスルーして走っているとリコン学長の速度は次第に遅くなる。完全に止まった場所の扉はボスが居座る部屋とは思えないほどにこじんまりとしていた。



「本当にここか?」


「ええ。リンガネ、降ろすわね。逃げちゃダメよ」


「あたしを何だと思ってんだよ。ここまで来て逃げるわけねぇだろ」 


「ふふっ、それでこそアカデミーの生徒だわ」



担いでいたリンガネを降ろしたリコン学長は敵陣にも関わらず、律儀にノックをして開ける。



「失礼するわよ〜」


「…なぁここって敵のボスが居るんだよな?」


「ああ」


「突入緩くね?」


「学長にも考えがあるんだろう」


「ふーん」



リコン学長完全肯定のハルサキも若干違和感を抱きながら後ろを着いて行く。リンガネも横に並んで特刀に手をかけながら部屋に入った。



「……居ない?」


「学長、姿見当たらねぇけど」


「ほら!出てきなさい!体は隠せても気配は隠せてないわよ!」



パンパン!と両手を叩くリコン学長。ボス部屋には執務用の机と社長椅子、そして大きな本棚と来客用のテーブルがあるだけで人の姿は見えなかった。リコン学長の呼びかけは人の居ない部屋に響き渡るだけで誰も応じない。


呆れるようにため息をついたリコン学長は自身の相棒である鞭で床を叩いた後、近くにある長テーブルをひっくり返した。



「みーつけた」


「ひっ、アカデミーのリコン…!」


「呼び捨てはやめて。私が惨めになります。せめてリコンさん、リコンちゃん、リコン様くらい付けなさい」



テーブルの下で蹲っていたのは小学生くらいの身長の男の子。リコン学長を見てあり得ないほどに震えている。



「子供?」


「ガキじゃんか。もしかして崇拝者のガキが紛れ込んだんじゃね?」


「いいえ。こいつは正真正銘、反社会政府のボスよ」


「でもどう見たって子供だ…」


「何だぁ?パパかママの代わりってやつかぁ?」



リンガネは威嚇しながら怯える男の子に近づく。まるで不良がカツアゲするように。自分をレディーと称しているくせして中身はイカつい不良なのだった。


そんなリンガネを見て更にビビる男の子。涙目になって今にも溢れ落ちそうだ。



「ぼっ、僕、僕は…」


「ビビりまくりじゃんか。カゲルを従えさせているんだろ?ボスなんだから。そしたらあたしら人間は怖くねぇはずだ」


「ひっ!」


「リンガネ、とりあえず後ろに下がれ」


「ハルサキは甘いんだよ。なぁリコン学長」


「それが彼の良い所でもあるわ」


「あ、ありがとう、ございます…」


「僕は!!」


「「「ん?」」」


3人で勝手に話を進めていると男の子は急に大きな声を出す。すると洋服のポケットに手を突っ込んで何かを探しはじめた。

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