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自分に出来ること 【医療班】

次々に負傷者が運ばれてくるこの場所は反社会政府本拠地から少し離れた場所にある簡易施設だ。


ここでは簡単な治療を行い、重症者は専属の病院へと運ばれる。まだ始まったばかりなのに負傷者の多さがこれほどまでとはと固唾を飲む少女は左腕が無かった。



「全く、忙しいったらありゃしない。どれだけ強化されたカゲルを相手にしたのじゃか…」


「びっくりだよ。まだ1時間も経ってないのに」


「びっくりなのはお前がなぜここに居るかじゃわい!病院で大人しくしておれ!」


「やだ!先生に良い子にするって言ったんだもん!」


「それは大人しくしてるという意味じゃろうが!」


「ヒマワリの良い子はみんなの役に立つ子!」



今回、医療班の指揮を取っているのは童顔先生と生徒達から呼ばれるセンリ。一応医師免許は取得しているのでそれなりの知識は備えている。


そんなセンリにベーッと舌を出すのは病院で治療期間を過ごしていたヒマワリだった。医療従事者に無理を言ってここに来ることを許可してもらったという。最後の最後に謎の脅しをされたのは医療従事者しか知らない。



「しかしお前、左腕ないのに手つきが良いな。包帯巻くが誰よりも速い。我には敵わないけど」


「右手しか使えない生活だからね。器用になったんだ!」


「ふーん。でも病院に居るはずのヒマワリがここに居るのを知ったシンリンはどんな表情をするのか楽しみじゃわい」


「センリ先生ってシンリン先生のこと好きなの?」


「馬鹿者!あんな奴好きになる方がおかしいわい!」


「アサガイちゃんはおかしくないよ」


「なんでアサガイが出てくるんじゃ」


「教えなーい」


「意外とお前もムカつくぞよ!!」



子犬のように吠えるセンリは顔を赤くしながらまた簡易施設に入ってくる負傷者の手当に回る。ヒマワリは少なくなってきた包帯を関係者の人に注文しに行った。



「すみません、包帯が…」


「Aクラスのシンリンの手当てを!左腕骨折、右足捻挫!そして高熱を出しています!」



男の人の声が聞こえてヒマワリは耳を疑ってしまう。シンリン。その名前は1人しかいない。包帯なんてどうでも良くなったヒマワリはすぐさまに入り口に向かった。



「先生!」



アカデミーの関係者に背負われているシンリンは苦しそうな表情をしながら何かに耐えようと歯を食いしばっている。意識が朦朧としているのかヒマワリの声は届かない。



「奥の部屋へ運ぶんじゃ!病院の搬送様子を見てからにする!」


「はい!」


「センリ先生…!」


「ヒマワリ落ち着け。とりあえず冷やすための氷を大量に持ってこい。それとギプスが段ボールの中に入ってるはずじゃ」


「うん!」



センリに指示を出されたヒマワリは焦りながらも確実に仕事をこなす。左腕が無くなってこれくらいのことは出来るのだ。



「あの時先生が助けてくれたようにヒマワリも…」



氷袋とギプス用の包帯を1本の腕で抱えたヒマワリはすぐさまシンリンの元へ駆けつける。ベッドに横たわるシンリンの姿は悲惨だった。


骨折と捻挫だけでなく、所々血が出ている。そんな姿にヒマワリは現実逃避をしたくなるがそれに耐えてセンリに道具を渡した。



「神様…先生を、みんなを守ってください…」



戦えない自分が出来ることは治療と願うことだけ。まだ前線にはAクラスの仲間がいる。ヒマワリは唇を強く結びながら、次の負傷者の手当てをするためにシンリンから背を向けて走り出した。

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