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委員長と激辛料理

連れて来たのはアカデミーの食堂。昼前なので早めに食べに来た指導者くらいしかおらず、ほとんど貸切状態だった。俺が食堂に来る時は大体貸切が多い気がする。ザワザワとうるさいよりかは静かに食べたい俺にとっては好都合か。



「えっと、何でここに?」


「食べるぞ」


「何をですか?」


「激辛料理を食べる。片っ端からな」


「!!」


「以前リンガネに聞いたのだが、ここは半分の量にしてくれるハーフサイズと言うのがあるらしい。それを2人で食べ進めれば全制覇出来るはずだ」


「……良いんですか?」


「俺は腹が減ってる。朝ご飯を食べ損ねたんだ」



いや、本当は普通に朝ご飯は食べている。昨日の夜にレオンから菓子パンと言うものを大量に渡されてしまったのだ。なんでもヒマワリに渡そうとしたらチョコレートなどの菓子を含めて食べきれなくなってしまうと言われ返されたらしい。


しかし買ってしまったので消費を俺に任せるという結論に至ったそうだ。腹八分目よりも食べてしまったので全く腹は空いてないが、この状況では胃を解放する時。


以前アサガイ委員長は辛い物を食べるとスッキリすると言っていた。それなら悩みに悩んでいる今が食べるべきだろう。俺が辛い物食べる宣言をするとアサガイ委員長は心なしか嬉しそうに口角を上げて料理人の元へ進んで行った。



「あっ、Aクラスの。ご注文は?」



リコン学長の前だけやる気を出す料理人も1ヶ月経てば俺の存在を認知してくれている。けれども俺が来たからと言って気分が上がるはずもなく、やる気がなさそうにしているのはいつも通りの姿だった。



「激辛料理を全てくれ。どれもハーフサイズで頼む」


「大丈夫ですか?全部だと体に悪いですよ。貴方達近々大きい作戦控えてるんでしょう?」


「構わん。その作戦を成功させるべくの食事だ」


「……かしこまりました」



渋々頷いた料理人は厨房に足を運んでいく。全く、つくづくやる気が見られないやつだ。心配してくれるのは有難いがもう少し気分を上げてくれたらこちらも接しやすいのに。


まぁ愚痴を言ってもしょうがない。隣に立つアサガイ委員長を見ると激辛料理を全て食べられるということに目を輝かせていた。



「水を用意してこよう」


「あっ、私も行きます」



きっとこれからの食事は俺にとって戦いになるだろう。少し背中に冷や汗をかき始める。でも言ってしまったのだから後戻りは出来ない。腹を括るしかないのだ。近くにあるコップに水を注いでいる俺はきっとこの後悲鳴を上げることになる。厨房からは何やら怪しい香りが漂ってきていた。



ーーーーーー



「お待たせしました。激辛麻婆豆腐、激辛カレー、激辛坦々麺、激辛ペペロンチーノ。そしてスペシャルガーリックライス肉を添えて激辛ソース和えです。全てハーフサイズで……ゲホッ、ゲホッ」


「ありが…ゲホッ」


「私こちらのおぼんを持って行きますね」


「出来れば窓際で食べてくださると幸い、ゲホッ、です」


「ああ。わかった…ゴホッ、ゴホッ」



お互いに咳き込みながら料理を受け取ってアサガイ委員長と一緒に窓際の席に座る。気を利かせたアサガイ委員長は食堂に香りが篭らないよう窓を開けた。


俺は2つのおぼんに乗せられた料理をテーブルに並べる。5種類の品と大量の水が俺達が使うテーブルを敷き詰めた。しかしこれは本当に料理と言って良いのだろうか。激辛料理はまるで覇気を纏っているかのように赤い。煉獄の言葉が1番合っている。



「シンリン先生、食べましょう」


「い、いただきます」


「いただきます」



ハーフサイズとはいえ、俺は中々手を伸ばせない。それよりもまた現れた『スペシャルガーリックライス肉を添えて』は絶対に半分の量ではない。普通に一人前だ。俺は向かい側に座るアサガイ委員長を見ると激辛麻婆豆腐にスプーンを伸ばしていて、ゆっくり味わうように噛み締めていた。



「美味しい…」


「なら良かった」


「シンリン先生もどうぞ!」


「も、勿論頂く。じゃあ俺はこの坦々麺とやらを」



他の料理とは比較的に赤い色が少ない坦々麺。きっとこれはこの料理達の中で1番安全な品だと見た。小さな器を自分の方に持って来て麺を取り出しひと啜りする。



「うっ…!!」


「どうですか?」



安全なんてものじゃなかった。完全に俺は騙された。麺を持ち上げたら中が真っ赤に染まっているではないか。しかし目の前でアサガイ委員長は期待の眼差しを俺に向けている。ここで咳き込んではいけない。アサガイ委員長に気を遣わせてはいけない…!



「美味だ!」


「良かったです!次は何を食べてみますか?」


「とりあえず味を0にするために水を飲んで良いか!?」


「はい!私もそうします!」



俺は勢いよく、アサガイ委員長は普通に水を飲んだ。耐えろ俺。これはアサガイ委員長を元に戻すための試練なのだ。


Aクラスの指導者として生徒達を守ると2人にも誓ったではないか。それは体だけでなく心も入る。感覚を無にしろ。そう俺は唱えながら次の料理へと手を伸ばした。


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