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守る刀と戦う刀

「……というわけで1週間後、アカデミー全員で反社会政府撲滅を行う。理解できたか?」


「む。了解した。その日までに腕と体調を整えておかなければな」


「やってるよ!!」


「……リンガネヘマしそう」


「えっ、ミロクニ?」


「やるのはわかったっすけど、役割分担は決めてあるんすか?流石に一斉に討伐!ってわけじゃないでしょ?」


「確かにそうだ。もう少し話を聞かせてほしい」



Aクラスの教卓に立つ俺は生徒達の言葉を受けて考え込む。ただ決行日しかリコン学長は教えてくれなかった。解散と言われ後も、俺が1番先に会議室から出て行ってしまったからその後の詳細はわからない。


もしかしたら残った指導者達で何か話し合っていたかもしれないな。もう少しだけ残っておくべきだったか…?



「その様子だとわからないようだな」


「すまない。後でセンリに詳しく聞いておこう」


「そうしてくれると助かるぞ、先生族よ」


「別に僕はテキトーに自由に戦っても良いんすけどね」


「……カナト、それはダメ」


「はいはい」


「ったく生意気なのは変わらねぇな」


「リンガネさんの乱暴さも変わりませんよね」


「あ?やんのか?」


「やりません」



とある生徒の机を挟んでお互いに睨み合うリンガネとカナト。そのとある生徒は心ここに在らずという言葉が似合っているくらいに黙って座っていた。いつもなら喧嘩をする奴らの止めに入る係なのに。



「アサガイ委員長」


「……あっはい!何でしょう?」


「体調が優れないか?」


「いえ、大丈夫です。すみません。ボーッとしちゃって」


「そうか」



そう微笑む彼女の様子をおかしいと思っているのは俺だけじゃなさそうだ。たぶんアサガイ委員長以外のAクラス生徒全員が思っている。


その中でもハルサキ、カナト、そして俺は理由を察していた。確実にあの時の3人のせいだろう。心の中でため息をついた俺はアサガイ委員長から目を離して教室の出入り口に歩いて行った。



「話は以上だ。作戦実行までの1週間、座学の授業は半減するらしい。その分自分の身体能力を上げておけ。俺も付き合える時は教えよう」


「ならこれからやろうぜ!先生!今日こそ手合わせを…」


「今から見舞いに行ってくるから無理だ。カナトかハルサキあたりに相手してもらえ」


「嘘だろ!?」


「本当だ」



振り向きながらリンガネに伝えれば猿のように騒ぎ出す。あいつは本当に戦いに執着しすぎる。カナトとはまた違う種類の暴走族だ。俺は教室の扉をピシャリと閉めてAクラスから離れる。他のクラスはまだ話し合いが行われているのか、廊下は静かだった。



「あ……しまった」



ふと、自分の懐に手を当てると硬い感触があるのがわかる。ミロクニに紹介された本だ。昨日の夜に全てを読み終えたので感想を言おうと思ったが、それどころではなくなってしまったために出てきてしまった。


とりあえず書庫に返さなければ。普通に3週間以上経ってしまったが、誰にも何も言われないので気にしなくても良いだろう。その前に使用者がほとんどいない書庫なのだから怒る人物も居なそうだ。



「先生族よ」


「ん?カムラか。追いかけてどうした?」


「許可が欲しくてな」


「許可だと?」


「そうだ。特刀の二刀流の許可が欲しい。以前、先生族に二刀流が出来るくらいの実力ではないと言われてから一刀流の技術を磨いてな。そろそろ二刀流に戻したいのだが…」


「そうか。確かにお前の精度は上がっている。……ならこうしよう。二刀流は解禁しても良い。しかし大事な場面やここぞと言う時は一刀流に切り替えること。どうだ?」


「感謝する」


「カムラの二刀流は攻撃力は上がるのは確かだ。しかし扱いに関しては一刀流の方が安定している。そのための考慮として考えろ」


「わかった。それにしても、最近の先生族は変わったな」


「変わった?何が」


「俺達をちゃんと見ていてくれている」


「…!」



カムラは少し照れたような笑顔をする。それに釣られた俺も恥ずかしくて目を逸らしてしまった。センリも言っていたが、そこまで変わっているのか?でもそれにはヒマワリの件が1番大きく関わっていると自覚している。助けられなかった後悔が俺を成長させてくれたのだ。



「お前は以前、母を助けられなかったと言っていたな」


「そんな話もした。あの事件の日か」


「ああ。その一件でお前は深く苦しんだだろう。でも苦しんだ今があるから刀を持って戦っているように見える。俺もそうだ。あの時の恨めしい自分が俺の考え方を変えてくれた。俺が今、刀を持つ意味が少しわかった気がする」


「その意味を教えてくれることは出来るのか?」


「……お前達Aクラスの生徒を守るためだ」


「先生族よ」


「何だ?もう言わないぞ」


「大丈夫だ。しかとこの身に刻みつけた。先生族が守ってくれるのであれば、俺は先生族の力となる刀になろう。いつでも俺の名を呼んでくれ」


「その時は頼む」



改めて面と向かいながら自分の気持ちを再確認する俺の顔は熱くなっていた。カムラに見られないように後ろを向いて書庫に向かおうとする。カムラは何も言わずにAクラスの教室に戻って行った。



「俺の力となる刀……か」


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