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皇子が中心の歓迎会

職員室と食堂までは距離が近いようですぐに入り口に着く。開きっぱなしの扉の奥には広い部屋が見えた。


テーブルと椅子が沢山並べられていて、カムイ王都の宮殿の食堂より大きい。本当にこの建物はどれくらいの敷地が使われているのかと改めて不思議に思った。



「こちらです」



アサガイ委員長はそのまま中へ俺を連れて行き、端の方にあるテーブルに向かう。



「場所は決まってるのか?」


「正式ではないですけど、暗黙の了解って感じでAクラスの人が座る場所はいつも同じ所です」



Aクラスが座るテーブルに着いた俺は1番右側に位置する椅子に座ろうとする。しかしアサガイ委員長は慌ててそれを止めた。



「シンリン先生が主役ですから真ん中に座ってください」


「真ん中…?俺は別に」


「今日は主役です」



俺の手を掴んだアサガイ委員長は長テーブルの真ん中の椅子を引いて、強制的に座らせる。俺は大人しくそれに従い静かに食事を待つことにした。


真ん中に座るなんて初めてな気がする。いつも中心には父上や母上が居たのだ。両親よりも身分が少し低い俺はその隣にずっと座っていた。


それが例え自分の誕生日でも同じことで、俺が中心に座る時はカムイ王都で1番の地位に立った時だけと思い込んでいたくらいに。


真ん中に座ることで自分が主役というのを直に感じられて何だかむず痒い。何もせずに座る俺に対してアサガイ委員長はその隣に立っていた。



「アサガイ委員長、何故お前は座らない?」


「これから食事の注文に行きますから。説明しておくと入り口の近くにあるカウンターに居る人に注文してください。メニューはカウンターの隣にある電光掲示板に表示されています」



ここは自分で料理人の元へ出向くようにされているのか。皇子の身分としては、普通あちらから注文を取りに来る。けれど死者の世界ではそれとは逆らしい。


やはりカムイ王都での身分はあまり通じないということか。通りで名前を出してもみんな驚かないし平伏しない。もしかしたらこの世界に来た時点で身分は0に帰っている可能性がある。


それに気付いてしまった今、俺はもう皇子としては生活できないかもしれないな。



「もう、一般的な民と同じか…」


「どうかしました?」


「気にするな。それよりずっとここに立っていては注文が出来ないぞ?」


「もう少しで皆さんが来るので」


「皆さん?」


「ほら、噂をすれば」



アサガイ委員長が向いた方向に俺も顔を向けると、そこには教室で会っていたAクラスの生徒数名がやって来た。先程アサガイ委員長がすまほと言う物を使って呼び寄せたのだろう。確かに歓迎会と言っていたのでAクラスの者を集めるのは当然だ。



「よっ!ちゃんと座学受けてきたぜ!」


「授業を受けるのは普通のことだ」


「待たせたか?先生族よ」


「………」


「ちょうど私とシンリン先生も来たところなので大丈夫ですよ」


「レオンとヒマワリは居ないのか?」


「おお!ちゃんと名前覚えてるんだけど!先生って先生らしいよな!!」


「どういう意味だ?リンガネ」


「レオン族、ヒマワリ族は任務族になってしまった。よって今Aクラスに居るのは俺達だけだ」



カムラは居ない2人の事を俺に教えてくれる。と言うことはレオンとヒマワリ以外の5人の生徒が歓迎会に参加するのか。……少ないな。俺が思い描く歓迎会とは全然違う。



「シンリン先生は何が食べたいですか?」


「何がある?


「色々ありますよ。肉料理、魚料理、野菜料理……」


「肉料理が良い」


「わかりました。皆さんはどうしますか?」


「俺はカレーにする」


「………メニュー見る」


「ペペロンチーノを頂こう。暴走族は?」


「その呼び方変えろや!!あたしはハンバーグ!」


「ハルサキさんはカレー。カムラさんはペペロンチーノ。リンガネさんはハンバーグ。そしてシンリン先生は肉料理ですね」


「頼む」


「ではミロクニさんと一緒に行ってきます。座って待っててください」



アサガイ委員長とミロクニは俺達の注文をしに料理人の所へ行った。残った者は席に座って雑談を始める。勿論、同じテーブルに座っている俺も参加だ。



「んで?服やら特刀はどうなったんだ?」


「3日ほどかかると言っていた。それまではこれの服と刀で過ごす」


「先生族の刀は真剣に値するのか?」


「これはカムイ王都で作られた刀だ。素材も良いのを使っている」


「でたカムイ王都!」


「貴方、寮の手続きは?」


「寮?」


「あたし達生徒や先生は寮に住んでるんだよ。ふかふかのベッドや大きいテレビ……最高の部屋だぜ!」


「手続きが出来なくても空き部屋くらいあるはずだ。俺かカムラが案内しよう。流石に男性寮にアサガイ委員長は入れないからな」


「わかった」



ハルサキの提案に頷いた俺はその後も、料理が来るまで3人と喋っていた。ほとんどの話について行けない俺は、適当に相槌を打って流している。時折カムイ王都の名前を出せばリンガネが面白そうに笑った。


雑談で時間を潰していれば10分の時が経ったようで注文に言ったアサガイ委員長の呼び声が聞こえる。料理を持って行くのに人手がいるようでカムラとハルサキが席を立ってアサガイ委員長達の手伝いに行った。



「なぁなぁ先生」


「何だ」


「あたしさ、強い人好きなんだよね」


「は?」


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