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愚族の皇子

「俺は皇子だぞ!?」



そんな弱々しい言葉の返事に相手は返してくれなく、俺は壁に背中を付けた。今日は我が国『カムイ王都』の建国記念日として宴をしていたはずだ。


俺も酒を飲んで物を食ってと気分は最高潮になっていた。しかし現在の状況はどうだ?俺が住んでいる宮殿内はあちこち荒れていてボロボロになっている。


使用人や武芸を見せに来た旅人は血を流して倒れていてなんとも気持ち悪い光景だ。そして今1番重大な情報。


それは俺の目の前でニタニタと笑っている人間。短い刃物から長い刀をそれぞれ持って俺にゆっくりと近づいてくる。これはもう人間とは呼べないだろう。


化け物だ。


それに対して俺は人間らしく足腰を震えさせて命乞いを始める。しかし化け物には通用せずに汚い笑いを飛ばされるだけだった。



「なぜ、こんな事を…!」


「そんなの決まってる。上のやり方が気に入らないからだ」


「何を言ってる!今日までカムイ王都が平和に暮らせたのは父上や側近達の力があってこそだろう!?寝ぼけたこと言ってないで医者を呼べ!!」


「ハッ。お坊ちゃんは何も知らねぇんだな」



化け物は自分の刀に付いた血を払うように勢いよく片腕を動かす。振るわれた刀からは血が飛び散って壁にべっとりと色を付けた。



「ひっ!」



俺はそんな化け物の行動に小さな悲鳴を上げる。命乞いもそうだが、今の悲鳴も全てこの化け物達には興奮材料としかならなかった。



「多額の税金」


「えっ…?」


「男は泥だらけで働いているのに安月給」


「何を言ってる?」


「女はお偉いさん方の相手で汚された。この意味がわかるか?わかるよな?お坊ちゃんは大人だもんな?」



言っている意味くらいわかる。しかしそれを信じることは出来なかった。


俺の中で父上は偉大な存在だ。誰よりも王都を考えて愛している。だから王都は平和だったんだ。化け物は何の妄想を語っているのか。



「ずっと宮殿で飲み食いしているお坊ちゃんは知らないか。ハハッ」



黙れ。飲み食いだけじゃない。俺は将来父上のようになりたくて勉学や武術に励んでいる。


最近はやっと皇族特有の力を少しずつ出来るようになってきた。全ては王都のため。



「もう声も出ないか。喋れないなら話す意味がない」



化け物は刀の先を俺に向けてまた1歩、1歩と近づいた。そんな化け物に俺は首を振ってだらしなく腰を抜かすことしかできない。



「じゃあな。愚族よ」



天へと掲げられた刀は一瞬だけ部屋の明かりで輝いた気がした。



……斬られた瞬間、色んな情景が思い出され走馬灯となる。最後に悔やんだのは王都の平和を続けて、誰かを導いてみたいという俺の夢に対しての想いだった。

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