3歳‐②:兄と側近
と、思っていた時期がありました。
「さあ姫様、立派な淑女になる為のお時間ですよ!」
兄のお披露目パーティが終わった翌日、俺には王女として求められる
身嗜みや言葉遣い、知識を身に付けるために指南役が就いた。
茶髪を後ろで括り眼鏡をかけた、いかにも出来そうなオーラを纏った女性のレオノーラさんだ。
レオノーラさんは生真面目で厳しい指導者ではあったが、この世界の知識を
教えてくれる貴重な存在だ。
「では本日は私達の国の身分制度についてお話をさせていただきます。」
彼女は元々、王都にある王立フェリス学院という学校で先生として働いていたらしい。
彼女自身も学院出身で、伯爵家の次女だそうだ。
王族に仕える者で、この国には貴族がいる。
貴族には身分があり、公爵家、侯爵家、伯爵家、子爵家、男爵家といった爵位がある。
また、それとは別で貴族扱いをされる一代限りの騎士爵などもある。
「一昔前には奴隷制度といった物もありましたが、現在は人道に反する、
という事で禁止されております。」
「ほかの国ではどうなのですか?」
「周辺諸国でも同じように廃止されている国が多いですが、一部の国では
未だ奴隷が扱われております。」
「へーそうなんだ…。」
「姫様、言葉遣いが乱れております。」
「あ、すみま…申し訳ありません。」
気が抜けていたらレオノーラさんに軽く注意をされてしまった。
「では次に、他国についてお話をさせていただきます。」
隣接している国はユグド帝国、サラスヴァ神聖国、国とは少し違うが
異種族の住んでいるミレ大森林といった場所があるらしい。
他にも大小様々な国があるようだ。
俺が今いる国も含めて、どれも聞いた事がない。
以前の時代からどれくらい経過しているのだろうか?
レオノーラさんの勉強時間が終わり、休憩がてら紅茶とお菓子を食べていると
兄であるフレンがやってきた。
「イリーナ!昨日から僕の側近となってくれた二人を紹介するよ。」
フレンと一緒に居た二人の男の子が前にやってくる。
「姫様、はじめまして。ハリス宰相の子息、ジェームズ・ハリスと申します。」
茶色の髪をした利発そうな顔の彼は、綺麗な言葉遣いと礼をしてきた。
宰相の息子という事もあり、親の教育もいいのだろう。
「よ、よう、俺はリアム・ルイス。ルイス騎士団長の息子だ。」
「おいルイス!姫様に対して言葉遣いが悪いぞ!」
「別にいいだろ?」
そっぽを向いてしまったリアムとジェームズが口論になっている横で
兄は笑顔でそのやり取りを見守っていた。
少し赤めの髪色のルイス少年は兄とは違う系統の美少年ではあるが、
いかにもやんちゃそうな見た目と言葉遣いをしていた。
騎士団長の息子という事だが、親の教育を聞いていないのだろう。
子どもが元気なのは良い事であるし、可愛らしいものだ。
「はじめまして、私はイリーナ・ヴィ・ルグネーゼです。
お二人とも、今後とも兄と一緒によろしくお願いしますね。」
立場上は俺が上なのだろうが、初めは肝心ではあるし、兄の側近達へ丁寧に礼をした。
「どうだい二人とも、言った通り僕の妹は賢いだろう?」
「あ、ああ。」
「とても聡明そうですね。」
「イリーナ、二人は僕と同じ7歳なんだ。
年上ではあるけれど上に立つ者として敬語は使わずに堂々と話して構わないよ。」
「かしこまりました。」
そうして兄の側近と初めての挨拶を果たした。
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