80 クレハの行方
王妃がクレハを探すために動かしていた兵士たちがクレハの件に関して報告があると王妃の元へと訪れていた。そこで、王妃は報告を聞くのであればルークも一緒に聞いたほうが良いと、そばに控えていたメイドにルークを呼びに行かせた。メイドに呼び出されたルークは急いで王妃の元へとやってきたのだった。
「王妃様、オーナーのことで何かわかったのですか?」
「今からクレハのことに関して調べさせていた兵士の報告を聞くところです。あなたにも聞く権利はありますから、一緒に報告を聞きましょう」
「感謝いたします、王妃様。」
二人の会話が終わるのを確認すると兵士はクレハのことに関して分かっていることを報告し始めた。
「王妃様、それでは報告させていただきます。結論から申し上げますとクレハ様は王都からピトリスに向かう途中に盗賊に襲われたようです」
「オーナーが盗賊に襲われたってどういうことですか!」
その報告を聞いたルークは今までにないほど取り乱していた。報告を行っていた兵士の肩をつかみ、その詳細を尋ねる。しかし、その行動はルークの八つ当たりであり、クレハのことを必死に調べていた兵士に失礼なことだと気づき、すぐに謝罪を行う。
「いえ、すみません、これはただの八つ当たりです。オーナーのことが心配で、つい」
「いいんだよ、私も今の君の状況なら、そうなってしまうよ。それより、続きを報告させてもらうよ。乗合馬車が定刻になっても到着せず、気になった従業員が衛兵に通報したところ街道で馬車の残骸と遺体が発見されました。幸いなことにその中にはクレハ様はいませんでした」
兵士のその報告に、ルークは明らかにほっとしている様子だった。行方は分からないものの、ひとまず遺体で発見されていないため、まだ生存していると考えたためだ。
「馬車の残骸の周囲を調査したところ、洞窟を発見いたしました。人が住んでいた形跡があったため、内部を調査したところおぞましい光景が広がっていました」
そこから、いつまで経っても続きを報告しないため、王妃は焦りをつのらせる。
「あなたはいったい何を見たのですか?続きを報告してください」
「はい、洞窟の中では顔を焼かれ、身元が誰だか分からない遺体が複数ありました。もしかすればその中にクレハ様がいらしたかもしれません」
その報告に王妃とルークは言葉を失い、部屋には重い空気が流れる。しかし、ルークはクレハであればきっと生きているはずだと信じ、引き続き捜索を行うことを嘆願する。
「待ってください、オーナーが死ぬはずありません!きっと生きています、僕にはわかります!」
報告を行った兵士はルークのことを気の毒に見つめるが、その沈黙を破ったのは王妃だった。
「少し待ってください、遺体はすべて顔が分からないようにされていたのですね?」
「はい、完全に焼かれており、まったく区別がつきませんでした」
「それっておかしいですよね、盗賊であればわざわざ顔を分からなくする必要はありませんよね。つまり、顔が分かってしまえば不都合が生じるということになります。もしかして、顔を焼いたのはクレハが死んだと思わせるためではないですか?」
王妃の考えに兵士は納得の表情を浮かべる。
「あり得ます、それならば顔が焼かれていることも説明できます。ですがなぜ、クレハ様を死んだと思わせる必要があるのですか?」
「おそらくクレハを利用するためです。良くも悪くもクレハの噂は国内外で広まっていますから、目をつけられていたんだと思います。そうであるならば急いで国内外問わずクレハの情報を集める必要があります。そして、なんとしてもクレハを見つけだしなさい」
ルークたちに希望が見えてきた瞬間だった。
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