70 同類のメイド
クレハはある一団と共に港町のキュリスに向かっていた。今回の目的はクレハ商会で新たに始める新事業の開発のためだ。以前に国王から塩を精製する際にできる苦い水に関して独占的に入手できるという権利をクレハはもらっていたため、その話をキュリスの街の領主に伝える役目を持つ役人と国から紹介を受けた新たな従業員たちと一緒に行動を共にしている。
彼らはキュリスの街で新たに始めるお風呂屋の従業員として働くことになる。また、その中には王妃が自分も利用するからと無理やり自身に仕えているメイドたちも参加させていた。
当初、彼女たちは自分たちの働く場所が王城から移されると知り、大なり小なり不満を抱いていた。もちろんそれを顔に出す彼女たちではない。しかし、今の彼女たちにそのような不満を抱いている者はいない。
それは彼女たちにクレハが新しく従業員になるならと自己紹介を行った時だった。当然その際には彼女たちに働いてもらう内容を説明していたが、そこでお風呂が美容に良いということを聞いてしまったのだ。
彼女たちはその時点で王妃に任命された時と比べ乗り気になっており、今ではお風呂に入ればどれだけ自分が美しくなっているのかを想像することが日課になっていたのだ。
そのうえ、従業員であれば毎日お風呂に入り放題という特典が付いているため、むしろ王妃に感謝しているようだった。そんな中でもこの話に一番興味を持っているのは王妃のメイドでもあるロドシアであった。
「ねぇねぇ、クレハさん。お肌にいいお風呂ってどんな感じなんですか?そんなお風呂きいたことないですから気になります!」
「様々な効果が期待できますが保湿の役割が大きいのではないですか?お肌に潤いを持たせてくれて肌に張りが出ます」
ここ最近、ロドシアはずっとクレハにお風呂のことを質問してばかりであった。その勢いは収まることがなく、いかにクレハと言えどもさすがに疲労を見せていた。
(本当にこの人は、どれだけ質問が出てくるんでしょうか?このままお風呂が完成して効果が出てしまえばお風呂から永遠に出てこないとかないですよね。まるでお風呂版のサラさんみたいですね。なんだかもう諦めたほうがいいかもしれません)
クレハはサラという問題児を思い出し、ロドシアの行動に頭を抱えるのであった。
クレハ達一団がキュリスの街へ到着すると衛兵たちが待機していた。衛兵たちのリーダーらしき人物がクレハ達と共にやってきた役人に声をかける。
「お待ちしておりました、領主様がお待ちですのでご案内させていただきます。こちらへどうぞ」
クレハ達は衛兵に案内され領主の屋敷へと案内される。街の様子を見ていると以前に比べ活気が溢れているように感じる。おそらく、クレハが提案した塩の精製によって街の雇用が活発化したためだろう。しかしながら、クレハの活躍を知るものは限られた人間しかいない。
クレハ達は以前にも訪れたキュリスの街の領主が住んでいる屋敷へと到着したのだった。
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