62 露店への襲来
露店祭二日目、今日で露店祭は最終だ。昨日ランキングに入れなかった商人たちは今日こそは自分たちの名前が呼ばれることを夢見て商品の販売を行う。名前が呼ばれ、自分たちこそが今日の主役になるために。
クレハ達の商会には朝からたくさんの客たちが訪れていた。昨日の売り上げが2位ということや珍しい食べ物を売っているという噂が広がり、昨日よりも大勢の人たちが訪れていたのだ。いつの間にかその中には王妃の専属メイドであるサラもいた。しかし彼女の眼はなぜか据わっておりその目線の先には竜田揚げがある。
クレハはいつもと違うサラの様子に思わず声をかける。
「あの、サラさん?どうされました?」
「クレハ様!竜田揚げをあるだけ全部、全部ください!お願いします、何でもしますからーーー!」
サラは突然声を荒らげるといきなりすべての竜田揚げを要求する。しかしそれでは後ろに並んでいる客たちがどのような行動に出るか分からないため、クレハはそれを拒否する。
「無理ですよ、サラさん。これはお客様みんなのものですよ。全部なんてあきらめてください」
「そんなーー、後生ですから竜田揚げをーーー」
サラは大声で泣きながらクレハに嘆願する。クレハはサラのあまりの様子に何があったのかを尋ねる。
「サラさん、いったい何があったんですか?」
「昨日から露店祭なのに露店の食べ物を何も食べられていないんです。祭りの期間中は私たちも忙しくて、参加することが難しいんです!ですから逃げ出してきたんです。今のうちにクレハ様の竜田揚げを食べさせてください。露店祭を楽しみにしていたのにこんなのあんまりです!」
サラの話を聞き、クレハは竜田揚げをいくつか渡す。サラは竜田揚げを目にすると勢いよく口に放り込み、口いっぱいに頬を膨らませる。その眼には涙を浮かべ竜田揚げの美味しさをかみしめているようだった。
「美味しいです。美味しいです!お肉がとってもジューシーで王城の料理人でもこうはいきません。これに比べれば王城で出る料理なんて食えたものではありません!クレハ様、ありがとうございます。これで私はまだ生きていられます!あの、露店祭が終わってもこの料理は売られるんですか?」
「ええ、ここまで人気があるようですので、今のところお売りしたいと考えています」
その言葉にサラは次の竜田揚げを頬張りながらガッツポーズをする。しかし、いまさらになって自分が逃げ出してきた身でバレてしまえばまずいと考えたのか、はたまた念願の竜田揚げを食べれたことで正気を取り戻したのか、急ぎ王城に帰っていった。
「何だったんですかね、あれ」
「あれでは一種の禁断症状ですね、いつか問題を犯さなければいいですけど」
クレハとルークはサラが去っていた姿を唖然としながら見つめるのだった。いよいよ露店祭二日目の営業時間が終了する。露店祭で最も売り上げを出した商会がいま、決定する!
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