44 クレハ流、塩の作り方
「海水が使えるのであれば、ここから馬車で二日ほど走らせれば港町のキュリスにつきます。あなたも忙しいのは承知していますが今はこちらも急いでいるのです。すぐにでも向かってもらえますか?」
王妃がクレハに尋ねるとクレハは快く受け入れる。
「もちろんです。直ちに向かいます。しかし、商会の者にはしばらく留守にすると伝えたいのですが」
「それはこちらから使いの者を出しましょう。サラ、クレハと共にキュリスに向かってください。二人とも頼みましたよ」
サラとクレハは早速キュリスに向かう。
2日後二人はキュリスにいた。早速、サラはクレハに塩作りに必要なものを尋ねる。
「クレハ様、塩を作るためには何が必要ですか。王妃様からの書状を頂いておりますので、必要な場所や物はこの街の領主殿に好きなだけ用意していただけます」
「それでは、バケツいっぱいの海水と調理場、それと綺麗な目の細かい布を用意していただけますか?」
サラは、苦くない塩を作ると聞き何か特別なものがたくさん必要と考えていたが、用意するように言われたのはありふれたものばかりで大丈夫なのかとクレハに尋ねた。
「クレハ様、用意するのはこれだけで良いのですか?」
そう尋ねるとクレハは問題ないと告げるのでサラは急いで用意を行うのだった。
二人はキュリスの領主の屋敷の料理場にいた。キュリスの領主は王妃に対して尊敬の念を抱いていた人物のため、サラから今回のことを聞き、快く引き受けたのだった。領主は自らの仕事があるため、クレハとサラに好きなだけ使ってくれて構わないと告げ、自身の書斎に戻っていったのだった。
「それではクレハ様、早速塩を作っていただけますか」
「ええ、分かりました。苦くない塩をお作りして見せましょう!」
クレハの塩作りが今始まった。
「まずは、鍋に海水を入れ火にかけます。海水がなくなるまでしばらく煮込みます。しばらくすると海水が減ってきて、海水の中に塩が混じってきます。これをしばらく煮込んで液体の混じった塩を作ります。サラさん、お願いした清潔な目の細かい布はありますか?」
「これのことですか?布なんていったい何に使うのですか?」
サラは疑問に思いつつもクレハに布を渡す。
「ありがとうございます。この布を別の容器に広げながらかけます。この上から先ほどの液を流し込みます。しばらくしたら液体が下に全て落ちて完成です。この時のポイントは海水がすべて無くなってしまうまで火にかけないことです。この残っている液体が苦みの元なので、海水をすべてなくしてしまうと塩が苦くなってしまうんです。ですので、その苦みの元を途中で分けてしまえば苦くない塩が完成します。サラさん、この布の上に引っかかっている塩を食べてみてください」
サラはクレハに言われた通り、布の上に残っている塩の結晶を恐る恐る一つまみする。
「・・・!クレハ様、苦くないです。この塩苦くないですよ。しかも岩塩よりもまろやかでおいしいです。私は岩塩の塩気がきつい感じが苦手でしたが、これなら美味しくいただけます。クレハ様、本当にありがとうございます。これでアルタル王国との問題も解決するはずです」
サラはクレハに向かい、泣きながら頭を下げる。二人はすぐにでも王妃に、このことを報告するために出来上がった塩を持ち、キュリスの領主に別れを告げ王都へと旅立ったのだった。
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