39 ルークの容態
診療所に運ばれたルークの症状は重体だった。幸いなことにルークを刺したナイフは急所を外れており、助かるか、助からないかは五分五分であった。
クレハはルークが治療中もその手を握りルークの名を呼び続ける。治療が終わってもルークは目を覚まさず、クレハはその手をさらに握りしめる。
ルークが目を覚まさない間、クレハは何故、自分が強盗達のおとりにならなかったのかをずっと後悔していた。あの時、もし自分が衛兵を呼びに行かなければルークがこんなことにはならなかったのではないかと、そればかりが頭をよぎる。
ルークが目を覚ましたのは2日後だった。この二日間、クレハはまともに食事がのどを通らず、睡眠もろくにとっておらず、ひどい顔だった。
「ルーク、よかった!目を覚ましたのですね。よかった。よかったです」
そんな彼女の様子にルークは彼女が無事だったと分かり、安心するそぶりを見せる。けがをしているのは自らだというのに。
「オーナー良かったです。ご無事だったんですね」
「何言っているんですか!あなた死ぬところだったんですよ!どれだけ私が心配したと思うんですか?」
クレハはルークにそう告げるが、ルークが無事だと安堵したのか、2日間の疲労のせいなのか。しだいにルークのベッドに倒れこみ寝息を立て始めるのだった。そんな彼女を見たルークは彼女の寝顔に微笑みながら再び眠りにつくのだった。
クレハが目を覚ましたのは翌朝であった。すでにルークは目を覚ましており、横になりながらクレハの寝顔を見ているのが分かるとクレハは急に恥ずかしくなり、急いでルークから顔をそむける。
クレハがルークにそのことに関して、文句を言おうとすると部屋をノックする音が聞こえた。
「ロイです、ダダ様もご一緒なのですがクレハ様、起きていらっしゃいますか?」
部屋を訪れたのはルークのことを心配に感じていたロイとダダである。
「はい、起きています。どうぞ入って下さい」
「ルーク様も起きていましたか。どうやら、大丈夫そうですね。刺されてしまった時はどうなるかと思いましたが、無事で何よりです」
「僕もびっくりです。あの時は本当に死んでしまうのではないかと思いましたが、意識を失う中でオーナーの声が聞こえたんです。だから、何が何でも生きないといけないと思ったんです」
その言葉にクレハの顔は自然と赤くなる。幸いなことにその顔を見た者はいない。
ロイと共に来たダダはルークを刺した強盗達の正体をクレハたちに告げる。そのことに驚きと怒りを示したクレハだったが、ダダから彼らは裁判で死刑が言い渡されたと教えられたため、少しは留飲をさげるのであった。
「クレハさん、我々はそろそろ国に帰らないといけない。これでも私はマタスの王子でな、あの素晴らしい宿にいつまでも泊まっていたいが、そうはいかないのだ。父上もベッドのすばらしさには感心していたよ」
クレハはここでダダが初めて王子であると知ったのだ。
「王子でしたか、この度はわが宿にお泊り頂いたのに騒ぎになってしまい申し訳ありません。次に来ていただくときには必ずご満足いただけるようなプランを用意してお待ちしております」
「ああ、父も喜ぶよ、ありがとう」
「いえ、こちらこそお泊り頂きありがとうございます。それにロイさん、もしあなたがいなければルークは間違いなく死んでいたでしょう。本当にありがとうございます。何かお困りの際は必ずお助けさせていただきます。」
「ロイさん、助けていただきありがとうございます」
クレハとルークはロイとダダに感謝を伝える。ロイとダダはそれを聞き終えると彼らの国に帰国した。
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