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37 クレハの叫び

ルークの声に気づいた強盗達は一斉にそのまなざしをルークに向ける。ルークは生まれて初めて向けられた明白な殺意に固まってしまった。強盗たちは自分たちをみた目撃者を消すために懐からナイフを取り出し、ルークに向かい駆けてゆく。ルークは頭ではよけなければならないと分かっているが体が言うことを聞かない。


ルークは自らの身に起こることを明確に意識してしまい、思わず目をつぶってしまう。ルークはすぐに痛みが襲ってくると思っていたがいつまでたってもそれがやってこない。


恐る恐る目を開けるとそこには先ほど自分に向かってきた強盗が血を流し倒れていた。そこには血の付いた剣を持ったマタス公国の王子ダダの従者であるロイがいた。ロイはルークに手を伸ばし立ち上がらせる。


「君大丈夫ですか?あなたは確かクレハ商会の従業員の方でしたね」


「そうです、商会からこの人たちが見えて、いきなり襲い掛かってきたんです。こいつらきっと強盗です。オーナーが今、衛兵を呼んできています。ですから、それまで僕が時間を稼がないと」


ルークはいまだに笑う膝に活を入れ、調理器具を拾う。そんな彼に、ロイは心配ないと告げる。


「大丈夫だ、私はこれでも、マタス公国の王子の護衛を務めているものだ。腕には自信がある、それに部下もいるからな。こんな奴ら相手ではない。おい、お前たち、我らが王の寝床を犯そうとした者たちを捕らえるのだ」


いつしか、ルークの声に起きてきたのかロイの部下たちも続々と強盗達に向かっていく。それを見たルークは安心して、膝をつくのだった。



ロイたちの協力により強盗達は続々と倒れていく。そんな中、強盗達にとってはさらなる追い打ちがやってきた。


「ルーク!衛兵たちを連れてきましたよー!」


クレハが、詰所からたくさんの衛兵たちを連れてきたのだ。それを見た、強盗達は数でかなわないと散り散りになって逃げだした。そのため、ロイたちは気づかなかった、逃げている強盗達の中にこちらに向かっているものが一人いることを。


そのものは、真っ直ぐとルークの元へと向かっていく。




衛兵を連れてきたクレハはルークの元に真っ直ぐ向かっている男の姿が見えるとともに、今まで生きてきた中で考えられないくらい嫌な胸騒ぎがした。クレハはルークに危険を知らせるために、めいいっぱい叫ぶ。


「ルーク!危ない!」


しかし、彼女の声が届くことはなかった。クレハが見たのはルークの胸に柄まで刺さったナイフだった。


「ルーークーー!」


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