330 不可能な依頼
王妃の依頼を受け、その経緯をルークに話すと彼は頭を抱えていた。それもそうだ、いくら国からのバックアップがあるとはいえ、帝国の商人を追いだすほどの店舗展開など、どれだけ大変な事か計り知れない。
「オ~ナ~、それどうするんですか。そんな事無理ですよ、どれだけ大変なのか理解しているんですか。」
「それくらい分かっていますよ、私だって商会の経営者ですよ。」
「だったら了承しないでくださいよ、今回の件はお金もかかりますし、人手だって足りないんですよ。それに、いくら商会の商品が人気があるものとはいえ、商人たちは様々な分野の事業をしているんです。
お酒を扱う商人もいればパンを扱う商人だっていますし、野菜を扱う商人もいるんですよ。その全部に対応して商売をしていくなんて不可能ですよ。
ただ単純にお店を増やせばいいってわけじゃないんです、ターゲットとなる商会と競合の商品を生み出さないといけないんですよ。オーナーにそんなアイデアあるんですか?今からでも王妃様に断って下さいよ、今回ばかりは絶対に無理ですって。」
王妃の依頼通り帝国の商人たちを追いだすためには彼ら一人一人が行っている商売に似た製品を販売したうえで売り上げを出していかなければならない。ルークからすればそのような事は不可能であり、今回ばかりはただの無謀な挑戦にしか見えなかったのだ。
「私が今まで無理なことを出来ると言ったことがありましたか?既に王妃様に協力していただいて準備は進めていますよ。幸いなことに最近はどこぞの商人さん達が賠償金でたくさんお金を落としていってくれたこともありますし、計画は順調です。」
「だから、お金はあっても売る商品のアイデアがないじゃないですか。商会のものを売ったとしてもバラエティは限られているんですから競合になるのはほんの一部の商人に対してだけですよ。」
「商品のバラエティなんて、今、邪魔になっている商人と全く同じものを用意する方法があるんですから気にする必要はないですよ。それに人手もです。何と言ったって王妃様に集めてもらうように頼んでいる人材は帝国の商人と同種のものを扱うことができる人たちばかりなんですから。」
実は王妃に今回の一件を頼まれた際に、クレハはとある人物たちを自分の元に集めて欲しいとお願いをしていたのだ。
ただでされ、多数の商人たちがターゲットであるというのにその全員に対して競合になりうる人材を用意するなどありえないことだ。
しかしながら、クレハの信じられない計画を聞いたルークはその方法に驚きはしたものの、納得はするのであった。
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