318 現実
「会長!先日から加入者への支払いが止まりません。このままでは商会に多大な損失が発生してしまいます。既に保険事業は赤字になっており、今すぐにでも何とかしなければ本当にマズいです!」
それはコズミィがナンスを追いだしてから数日後のことだった。ここ最近は先日の一件によって全く口を聞いていなかった二人だったがこのまま何もしなければ瞬く間に商会が傾いてしまうと危惧したナンスが彼女の元を訪ねてきたのだ。
「いきなり入ってきて何なの、急にどうしたのよ。」
「会長、ここ数日の保険事業に関する報告を聞いていないんですか?」
「またその話、その話はもういいって言ったじゃん。」
既に事業としては赤字となっていることに全く気が付いていない彼女にすぐさま目を覚ましてほしいとナンスは収支報告書を彼女に差し出したのだ。
「そんなことは良いので今すぐこれに目を通してください!」
「いったい何、・・・・・はっ、なにこれ。ちょ、ちょ、ちょっ、これなによ!何でこんなことになっているの。」
「ですからこれは保険事業の収支報告書です。既に事業は赤字で現在は他の事業の黒字分で補填している状況です。すぐさま対策を考えましょう、そうでなければ商会全体が赤字になってしまいます。それだけは何としても阻止せねばなりません。」
流石の彼女も今までは舞い上がっていたがこの報告書を見せられては正気に戻らざるを得なかった。しかしながら正気に戻ってからは流石というべきか、ここまでコズミィ商会を発展させてきた彼女が自らの優れた手腕を発揮させたのだ。
「すぐさま新規の契約を中止にするようにして!それから、既に支払い要件を満たしている案件は仕方がないから支払いだけ済まして、これ以上は支払いをしなくていいように契約を何としても破棄して。
相手が認めないようだったら多少のお金は渡してもいいから何としても契約を中止にさせて。もちろん、現在加入している人たちにも支払ってもらった金額より多く渡してもいいから契約を破棄にして頂戴!」
「会長・・・、すぐさま処理いたします!」
最近の彼女の様子ではもう無理かもしれないと考えていたナンスであったが瞬く間に以前の彼女へと戻り、一瞬だけはっとしたものの、すぐさま動かなければ商会に致命的なダメージが加わってしまうと動き出したのである。
その後、幸いなことにナンスが早急に対処を行った事でコズミィ商会は致命的な損失はま逃れることになったのである。しかし、その過程でかなりの現金を使用してしまったため、コズミィ商会はしばらくは新事業などに投資を行うことができず、停滞してしまうのである。
しかしながら、これはまだましな例でクレハの保険事業を安易に真似した商人たちはほとんどが痛い目を見ることになり、その日暮らしも危うい状況に立たされてしまうのである。そんな彼らがクレハを恨むのは可笑しな話だが自然と彼女へと怒りが向いてしまうのである。
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