316 保険のパクリ
「オーナー、聞いているんですか?このままだとまずいですよ。」
ルークがクレハに鬼気迫る様子で話していることは先日クレハが始めた保険の事業に関することだ。このクレハの事業の優位性に気が付いた商人が全く同じことを始めており、王都ではその商人の保険制度に加入するものが数多く存在していたのだ。
「ちゃんと聞いていますよ、そのコズミィ商会が保険の制度を真似してきて王都では加入する人が続出しているんですよね。」
「どうしてそこまで平気な顔しているんですか、コズミィ商会はオーナーが考えた保険事業でどんどん頭角を現しているんですよ。せっかくオーナーが新しく考えたアイデアなのに。」
ルークはクレハが考えた保険を全く知らないコズミィ商会が勝手に真似をしていること自体が許せなかったが更にクレハよりも加入者を増やし、頭角を現していることが許せなかったのだ。
「まぁ、私もその商会と似たようなことをしていると言っても間違いではないですけど、たぶん大丈夫ですよ。だって、その商会って加入する際にちゃんと調査を行っていないですよね?」
「えっ、調査ですか?はい、聞いた話だと入りたいと言えばだれでも加入できるらしいですね。でもそれがどうかしたんですか?」
「何言っているんですか、最終的にはお金を支払うかもしれない加入者に事前の調査を行わないなんてバカげていますよ。そんなことをしていれば確かに一時は加入者が増え、入ってくるお金は増えるかもしれませんがその後が地獄ですよ。
私がこの事業のシステムの穴をどれだけ考えてきたんだと思っているんですか、何も考えないでただ真似をするだけだと痛い目を見るのは確実ですよ。」
確かにクレハは元々知っていた保険という制度を利用したが具体的な内容は自分で何度も検討を行ってきたのだ。だからこそ、安易に真似をしたところで簡単に物事は進まないと彼女は確信しているのである。
「でも、それだと結局はオーナーの保険を利用する人は増えないことになりますよね。むしろその人が失敗してしまったら保険に対して悪い印象が広まってしまって加入してくれる人がいなくなるんじゃないですか?」
「確かに、一時的にはそうなってしまうかもしれませんけど、誠実な商売を続けていれば必ず成功しますよ。私達が今することは現段階で加入してくれている人たちに対して誠実な対応をすることなんですから。」
クレハは彼女の言う通り、現段階で加入している顧客に対して誠実な対応を行っていくことを決意していた。そんなクレハとは対極的に、彼女が予想していたように、保険という制度を甘く見ていた商人の足元は崩れ始めてしまうのであった。
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