305 一週間後のお楽しみ
「オーナー、結局、あの治療院に行った意味って何だったんですか?以前言っていましたよね、あの治療院の言っていることは嘘だって。それなのにどうして行ったんですか?」
クレハが王城から帰って来るや否やルークに人数を集めて治療院へと向かうと出発したため、ルークはその真意を未だに理解していなかったのだ。
「もちろん、あの治療院の医者の診察がでたらめな事なんて百も承知です。」
「だったら、どうしてあんなことをしたんですか?かなりお金も使いましたよね、流石にもったいなかったんじゃ?」
ルークがやはり意味が分からないと首をかしげているとクレハは不敵な笑みを見せる。
「あれでいいんですよ、わざわざ大人数であの場所に向かったことに意味があるんですよ。私が薬は必要ないと言っていたのにあの医者は絶対に必要だと私に売りつけてきたんですから、効果がないなんて言わせませんよ。
これが嘘だったら大変ですね、貴族に詐欺をかけるなんて名誉ある治療院じゃなくてただの詐欺集団です。証人だってあんなにいたんですから、もしも詐欺だった場合は信用は失墜しますよね。」
クレハの独り言のような説明のようなささやきを聞き、ルークはようやくクレハが行いたかったことを理解するのだった。
「なるほど、だからあそこまで大人数で向かって周囲の目を集めていたんですね。証人を一人でも多くするために。」
「そう言うことです、あの時病院に向かった皆さんには薬は飲まないでくださいと伝えているので一週間後くらいに薬を飲んでないのに生きているじゃないかって治療院で大騒ぎする予定なんですよ。
そこで治療院から出ていた薬が嘘の可能性が高いとみんなが疑えば王妃様たちにも介入の余地が生まれるでしょうし。」
そう、クレハの計画とはわざと治療院に行けば医者は間違いなく薬を処方してくると考え、その薬を服用しないことで治療院が詐欺で金を巻き上げていることを証明してやろうというものだった。
そうして、その事実を明るみにし、民衆たちの不信感を募ることで王妃たちがセルファム伯爵達にとどめを刺しやすくしたのだ。
しかしここでルークには一点気になることがあった。
「あれ?でもそれはたまたま生き延びただけでもう少しすれば体調が悪くなると言われればどうするんですか?病気なんて個人差がありますよね?」
「こっちは20人でいったんですよ。その全員の診察が外れるなんていったいどれくらいの確率だと思っているんです。
それに、別に医者を説得する必要なんてないんですよ。大事なのは周囲の人間に怪しいと思わせることなんですから。誰かが一度怪しいと疑念を抱けばそれが広がるのなんてあっという間です。一週間後が楽しみですね!使った以上のお金も回収したいですし。」
クレハは今までさんざん迷惑をかけられてきたセルファム伯爵たちに決定打を加えることが出来るのが嬉しいのか、治療院に再び向かう予定の一週間後が楽しみで仕方ないと言ったように自らの仕事に戻るのであった。
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