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292 詐欺師の買い物

時間は少しだけさかのぼり、クレハが審問院にて尋問を受けている時のこと、セルファム伯爵が秘密裏に売りさばいている全能薬を欲しがる人物が現れたのだ。


もちろん、最近ではそう言った人間も多くなっており、薬が欲しいと言う人間は少なくない。しいて言うのであれば彼の元にやってくるのは大抵が一般向けに売りさばいている売人であったり秘密裏にここにやってくる貴族本人だが、今回の客は自分の主人に薬を与えたいというものだった。


お初にお目にかかります、私の名前はアイールと申すものです。私の主人はひどい病に侵されてしまい、想像を絶するような痛みに苦しんでいます。


「噂で全能薬は痛みも取り払う効果があると聞きました。どうかその薬をお売りしていただけないでしょうか?」


自分の主人の為に薬を買いに来たというのは珍しいケースであったが客には変わりないとセルファム伯爵は喜んでアイールに薬を売るのであった。その行為が後々、自身の首を絞めるとも疑わずに。




王都の一角、人気のない路地でとある男女が秘密裏に密会をしていた。どうやら男の方はセルファム伯爵から薬を購入したものと同一人物のようだ。残念ながら女の方は暗がりでその顔立ちは確認することが出来ない。


「あら?今日はいつもの老人の姿ではないのですね、あの姿が気に入っていたんじゃないですか?」


「あれは詐欺用の変装ですよ。本来の姿であれば若すぎますから相手にされないこともあるのですよ。」


彼は普段から詐欺師という危険な職業をしているため普段は変装をしている。しかし、ここにいる女性と顔を会わす際には必ず本来の姿でやってくるのだった。それがどういった意味を表すのかはおのずと分かるときが来るだろう。


「それで、例のものは手に入りましたか?まさか手に入れれなかったなんて言わないですよね?」


「安心してくださいよ、ほら、この通り例の物は手に入れました。詐欺師の私に買い物をしてこいだなんて簡単すぎますよ。」


アイールはそう言うとセルファム伯爵から購入した全能薬をすべて差し出す。それを受け取った女はすぐさま自身の懐へと最新の注意を払いながらしまうのであった。


「ありがとうございます、助かりました。そう言えば、カルティ伯爵のお礼をまだ言っていませんでしたね。そちらの件に関しても助かりました。」


女が以前の仕事の礼を伝えるとアイールはむしろお礼を言いたいと言い、喜んでいる。


「あぁ、あのバカな伯爵の件ですか、それなら私も儲けることが出来ましたのでむしろこちらがお礼を言いたいくらいですよ。それにしても騙すわけでもないんですから薬くらい買いに行けばいいじゃないですか。」


アイールは買い物くらい自分ですればいいではないかと尋ねるも彼女はとある事情により、それが難しかったのだ。


「そういうわけにもいきませんよ。わたしにも立場がありますからね。」


「ほんと、あなたくらいですよ。この私にこんな依頼をしてくるのは。まぁ、あなた以外にどれだけ金を積まれようが地位を与えられようが仕事をする気はありませんが。」


アイールにとって、金や地位など貴族から自分でまき上げればいくらでも手に入れることが出来るものであり、本来であれば誰からも命令をされることを嫌う性分だった。


だからこそ、この目の前の女性がアイールにとっては特別な存在だということが分かる。


「はいはい、いつも感謝していますよ。あなたにはあの頃からずっと感謝していますよ。」


女性がニヤニヤと感謝していると答えるとアイールは彼女に聞こえないくらい小さな声で口ごもりながらつぶやくのであった。


「なに言ってるんですか、感謝したいのは私の方ですよ。あなたが居なければ私は・・・。」


そんな小さなつぶやきだが、彼女にははっきりと聞こえてしまったのだろう。先ほどとは非にならないくらいニヤニヤとしながら彼をいじり始めるのだった。


「おや、あなたがお礼を言うなんて珍しいですね。あのチミッコが成長したものですね。」


「う、うるさい!用はすんだんだろ、俺はもう帰る!」


こうして、アイールは逃げるように彼女の元を去るのであった。


よろしければブックマーク登録や↓にある☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただければ大変うれしく思います。


また、作者は他の作品も投稿していますので興味がある方はそちらもお願いいたします。

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