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289 審問院

全能薬の規制も結果的にはうまくいき、領内という前提にはなるがその脅威は完全になくなっていた。しかし、現実は非情で平和なひと時はいつまでも続くわけではなかった。


「ビオミカ男爵、数多くの人間からあなたの領内での政策に関して苦情が寄せられています。その多くが客観的な根拠もなく個人の自由を阻害する許されざる行為との話が挙げられています。


とにかく、ここまで提言が多いとなると我々としても動かざるをえませんので素直にご同行願います。」


全能薬の対策も順調と思われていた中、クレハの目の前に現れたのは審問院と呼ばれる存在だった。彼らは簡単に言えば貴族の行き過ぎた領内での法を取り締まる存在で訴えが多くなればその領内に関しての調査を行うと言ったことを職務としており、彼らの言い分ではクレハの今回の全能薬に関する規制が問題であるという訴えが多く出ているので調査を行うと言った事だった。


この訴えが多いとはもちろん平民による訴えなどではない。ここで訴えをあげることが出来る人間というのは貴族や大商人と言った権力者のみだ。


本来であれば彼らは良からぬ貴族の行動を事前に規制するために作られた存在であったが告発による報復を恐れた平民たちがそのような行動に至るはずもなく、彼らが動くことなどほとんどなかったのだ。


しかしながら、規制を始めた途端に彼らがクレハに対して調査を求め始めた。これはどう考えてもどこぞの貴族や権力者がこの行為に対して邪魔に思っていたため彼らを動かしたとしか思えないような状況だった。


「分かりました、調査には協力しましょう。しかしながら今は重要な時ですので早急に終わらせるようにしてくださいね。」


「承知しています、我々はあくまで訴えが多かったため動いたにすぎません。あなたに何もやましいことがなく調査にもご協力いただけるのであればすぐにでも調査は終了します。


ですので、調査には全面的にご協力していただけることを期待しています。過去には調査を恐れて証拠などを隠蔽しようとしたものもいましたがそう言ったことを行えば状況がさらに悪化することはま逃れませんから。」


クレハは何者かが自分の行動に対して規制をかけてきていると考えつつもこの調査ではやましいこともなく薬の規制程度ではどうにもならないと考えたため調査にも素直に協力することにしたのだ。


しかし、こんなことをしたところで薬の規制が解禁される筈もなく、これを仕組んだ黒幕の意図がつかめないためクレハは言いようのない不安に襲われるのであった。


よろしければブックマーク登録や↓にある☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただければ大変うれしく思います。


また、作者は他の作品も投稿していますので興味がある方はそちらもお願いいたします。

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