279 怪しげな薬の噂
ある日のこと、いつもの様にクレハが仕事を始めようとすると具合の悪そうなルークが彼女の元にやってきたのだ。
「イタタタタッ、う~まさかここまで痛いなんて。」
「だから言ったじゃないですか、いくらお酒が初めてだからってあんな飲み方をすればそうなりますよ。立派な二日酔いです。」
昨日はルークにとって初めてお酒を飲む機会があったため彼は自分のペースが分からずに好きなだけ飲んでしまったのだ。もちろん、そんなことをすればどういう結果になるのか理解していたクレハは必死に止めたのだが現状を見ればその結果は容易に想像がつくだろう。
クレハはそんなルークを見かねたのか一杯のコーヒーを彼に差し出す。
「はい、これを飲んでください。二日酔いならコーヒーである程度はましになりますよ。これに懲りたら少しは考えてお酒をたしなむことですね。」
「う~、もうこんなのこりごりですよ。にがっ・・・。」
ルークはクレハからもらったコーヒーをためらいもせず一気に口に入れる。しかし、その行為が愚かだったとすぐさま体で知ることになる。ルークはミルクも何も入っていないコーヒーを一気に飲んでしまい、その苦さに思わず顔をしかめてしまうのであった。
しばらくルークが休んでいるとコーヒーのおかげなのかある程度、体調がましになり始める。すると頭も働き始めるようでふとした瞬間に街で聞いた噂を思い出すのだった。
「そう言えば街で買い物をしたときに聞いたんですがなんでもすごい効き目の痛み止めがあるらしいですね。しかも、すごく気分が良くなるらしくて病みつきになってしまうらしいですよ。そんなものがあるんですね。」
そんなルークの話を聞いたクレハは思わず怪訝な表情を浮かべてしまう。彼女からすればそのような効果を持つ薬など怪しさしかないのである。
「何ですかその怪しげな薬は、それって本当に大丈夫なものなんですか?」
「さぁ?僕もよく分からないです。うわさでしか聞いたことがないですから。そもそもその薬自体が存在しているかもわからないですしね。」
ルークは噂程度で聞いた話だから忘れてくださいと告げるもクレハは嫌な予感がぬぐい切れなかった。ルークが街で話を聞いたということは自身が収める領地にまでその怪しい薬が流れてきているかもしれないのだ。
「ですがその様な噂が流れているということは少なからずそれに近いものは存在しているのかもしれませんね。とにかく、何もなければそれでいいですが、あった場合は問題です。その件に関しては詳しい調査を行いましょう。
それと、その薬の正体が分かるまでは絶対に摂取したりしないようにしてくださいね。もっとも、ルークならばそのような訳の分からないものを摂取しようとは考えないと思いますが。」
「分かりました、それじゃ僕の方でも街でその薬のことを知っている人がいないか聞いてみますね。ついでにその薬を摂取したことがある人がいたら話を伺ってみます。」
こうして、クレハ達は噂に出てくる怪しげな薬に関しての調査を始めることになるのだった。
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