264 殺害容疑
それは例の一件があってからしばらく経った後の出来事だった。王妃からチーリエ王国の件に関して至急話したいことがあると呼び出しがあったのだ。
その連絡を受けクレハが王妃の元に向かうと彼女は眠っていないのか目の下にはクマができ、とても体調が良好とは言えなかった。
「それで、チーリエ王国に関しての話とはどういうことなのでしょうか?」
「実はチーリエ王国が属しているエンポリー連邦から抗議の書状が届いてね。そのことに関して話をしたかったのだけれど、クレハに連絡をした時とは状況が変わったのよ。あなたが来る前にプアア王妃とエンポリー連邦の代表の使者を名乗る人間がやってきてクレハと話をさせろって言ってきているのよ。」
「理由はプアア王妃がいるということでなんとなくは想像できますが、私に用ですか?まぁ、話をするくらいであれば問題はないですがどう考えてもそれだけで終わる気がしないですね。」
連邦の代表からの使者、そんな人間がわざわざやってきて話をして帰る。そんな希望的観測はありえないだろうとクレハははめ息を吐く。
「向こうも話が聞きたいって言ってきているんだし最悪それ以上になれば話が違うって断ればいいと思うわ。今回はあくまで話を聞きたいと言うからそう言う場を設けているだけであってそれ以外のことをしようとするのであれば私が責任をもって止めて見せるわ。」
特に理由もなく外国の使者との話を断わるのは無理かと諦め、潔くクレハは使者たちの元へと向かうのであった。
「この人殺しが!返せ、私のポポルコを返せ!」
クレハ達がプアア王妃のいる部屋に入ると開口一番に発言された言葉はそれだった。突然の彼女の行動に王妃でさえも意味が分からないというような顔をしている。
「これはどういうことでしょうか、使者殿。私はあなたが話をしたいと言うからクレハとの接触の機会を設けたのよ。それをいきなり人殺しだなんてあまりにも無礼極まりないとは思わないの?」
「申し訳ございません、彼女も気が立っているんです、お許しください。それくらいショックな出来事があったものですから。」
「そんなことは関係ありません、あなた方が約束をたがえると言うのであればこの話は無かったことにしましょう。大切なビオミカ男爵に訳の分からない発言をしている変な人間を見せたくないので。」
王妃は今回の話はなかったとにするといい、クレハを返そうとする。
「お待ちください、申し訳ございませんがそれは認めることが出来ません。」
使者がクレハ達の目の前に立ちふさがると流石に王妃もそろそろ我慢の限界なのか冷ややかな目でにらみつける。
「先ほどからどういうつもりです!認めることが出来ない?それを決めるのは私であってあなたではない。エンポリー連邦はその程度の常識も持ち合わせていないのですか?」
「いえ、そちらのビオミカ男爵にチーリエ王国、ポポルコ王子の殺害容疑がかかっている以上、帰ってもらっては困ります。」
「「はぁ?」」
なんと、クレハはいつの間にかポポルコ王子の殺害容疑をかけられてしまっていたのだ。
よろしければブックマーク登録や↓にある☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただければ大変うれしく思います。
また、作者は他の作品も投稿していますので興味がある方はそちらもお願いいたします。




