255 毒見役
「クレハ、待っていたわ。頼んでいたものが思いついたんですって!」
「クレハ様、また何が素晴らしい食べ物を世に創造されたのですね!」
王妃の元に到着するとあらかじめ今回の要件を話していたからかサラも王妃も目を輝かせている。クレハが紹介する食べ物には外れなどなく、今回も想像できない美味しさのものを食べさせてくれると考えているからだ。
「はい、今回は運よく重要な材料が店の方にありましたのでそちらを活用しようかと考えました。どうぞ、食べてみてください。サラさんの分もちゃんと用意していますから味わって食べてくださいね。ちなみに、これはハンバーグと呼んでいます。」
クレハはあらかじめハンバーグを作っておかないと製造工程を見られてしまい、サラに自重することなく食べられてしまうと考えたため今回は料理をもって王妃と対面したのだ。
クレハが二人にハンバーグを差し出すと案の定、自分の分をとり、すぐさま王妃よりも先に食べようとするが、その瞬間にクレハがあのことを発言する。
「食べる前にあらかじめ言っておきますがこの食べ物には大量に摂取すると幻覚や吐き気などを起こすものが入っています。最も、その量は微々たるものですので一つや二つ、食べる程度でしたらまったく問題はありませんが。」
幻覚や吐き気と聞き、一瞬は動きを止めるサラであったが一つや二つ、食べる程度であれば何の問題もないと聞き、すぐさま口へと運ぶのであった。もちろん、王妃はそんなクレハの言葉を聞き、動きを止めてサラの様子をうかがっている。
流石にそのような症状があると聞けばためらってしまうのも当然だろう。
「クレハ、それって大丈夫なの?流石にそんな症状が出るのであれば食べたくないのだけれど。」
「安心してください、本当に微々たる量しか入っていませんので何十個も、食べなければ全く影響はありません。サラさんを見てくださいよ、すでに食べ終わってしまっていますが何もないですよね。」
「確かにそうね、サラが食べても大丈夫なら問題ないでしょう。」
「クレハ様、お代わりをください。もっとお代わりを、これは止まりません!」
元気にお代わりを要求するサラを見ると問題ないだろうと王妃は自身のハンバーグを食べ始める。
「サラさん、言ったじゃないですか、これは食べすぎるとダメなんですから絶対にお代わりはあげませんよ。一度食べ始めたら止まらないじゃないですか!」
「そ、そ、そ、そんなことはありませんよ。私だって自分で自分をコントロール出来ますから。」
「本当ですか?それなら別にこれ以上お代わりをする必要はないですよね、だって我慢できるんですから。」
「いえ、やっぱり我慢できません。お代わりをください!」
サラは見事な敬礼を見せ、先ほど発言した内容をすぐさま撤回する。そんなサラの発言を聞くとクレハは笑顔で微笑むのだった。
「そうですか、我慢できないのであればこの食べ物が生誕祭で出されても食べないでくださいね。これ、本当に食べすぎると危ないものですから。」
「そうね、サラはいつも食べすぎてしまうから我慢ができないのであれば初めから食べない方がいいわ。これ、とっても美味しいわね。これなら貴族も食べることが出来るし、こういうのを待っていたわ。
本当に、クレハに頼んで正解よ。危険性に関しても販売する際に食べていい量を決めて徹底させれば問題ないわね。これなら国としてのメンツも保つことが出来るわ、本当にありがとう。」
「いえ、王妃様にはいつもお世話になっていますから。お礼をたっぷりと貰えば問題はありません。それに、危険性に関しても症状が出るような量のハンバーグを食べることが出来る人間自体がほとんどいませんよ。」
「あら、あなたには適わないわね。お礼もちゃんとするから期待していて頂戴。」
クレハと王妃の二人はハンバーグが今回の生誕祭の目玉になるとこれからの計画を話し合おうとしているとサラが泣きながらクレハにしがみついてくる。
「だ、だましたんですね!ひどいです、私が我慢できるって言ったらお代わりをくれないくせに、我慢できないと言っても食べさせる気がないじゃないですか!
お代わりをください!私は食の探究者として断固抗議します!お・ね・が・い・し・ま・す。」
「さぁ王妃様、生誕祭には準備が大変ですし計画を話し合いましょう。こうなることを見越して作り方は伏せておいたんですから。ここで抗議してもどうせ食べられませんよ、作り方を知っているのは私だけなんですから。」
「そうね、詳しい話をしちゃいましょうか。貴族達も黙るような盛大な計画にしましょう。あのうるさい王族たちもこんな料理を食べれば何も言えなくなるに違いないわ。」
「鬼!悪魔!ケチ!クレハ様!最低!」
サラの悪口という名の抗議を聞きながらクレハ達は今後の計画を話し合うのだった。
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