246 許し合える心
「そうですか、確かにそうですよね。許し合える心は大切です。えぇ、とても大切ですね。」
クレハは賠償は一切行わないというマグナ大司教の言葉を皮切りに突然笑顔になり、彼の言葉を肯定し始める。
「おぉ、分かっていただけましたか、流石はクレハ様です。大商会の会長を務められているだけありますね。」
「はい、私も許し合える心は必要ないと考えていましたがあなたの言葉を聞き、大切だと思えました。」
「あなたのような心が広い方は来世で素晴らしい人生を送ることが出来るでしょう。それでは、クレハ様にも理解いただけたようですので、私は失礼させていただきますね。」
そんな彼女の態度にマグナ大司教は自身の言い分が分かってもらえたと機嫌を良くしながらクレハの元を去っていくのだった。
「えぇ、もちろん許し合える心は大切ですよね。だから、あなたも許してくれますよね。ふふっ。」
マグナ大司教が去った後に放ったクレハのささやきは誰にも聞かれることなく、笑い声だけが響き渡るのだった。
「マグナ大司教、クレハ商会と話はついたのだろうな!まさか、和解していないのにもかかわらずこの私の目の前に現れたなどとほざくわけではないだろうな。」
「もちろんでございます、既にクレハ商会の代表と話をつけ和解をしてまいりました。」
マグナ大司教が教団の施設に戻ると教皇に呼び出される。そこで彼はクレハ商会の件を尋ねられると既に問題は解決したと嬉しげに語るのだ。そんな彼の表情を見るや否や教皇は厳しい目を向けるのを止めるのだった。
「そうか、それは良かった。あまり問題を起こすのではないぞ、やるのなら問題にならないようにやるのだ。」
「はい、申し訳ございません。ご迷惑をおかけいたしました。」
つまり、教皇は問題を起こすなと言っているのではなく、問題にならないようにうまく立ち回れと言っているのだ。彼らは既に問題は解決して次こそはうまくやれると考えているがそう考えているのは彼らだけだ。
実際にはクレハは許しておらず、問題となっているクレハの宿を再開するつもりもない。確かに、今の現状では商会の売り上げが無くなるため、本来であれば早々に再開することが好ましい。
しかしながらクレハには収入源が数多く存在しているため、その一つが無くなったところでほかで補填することが出来るのだ。
だからこそ、クレハは自分の好きなだけ問題を終わらせることがなく、延々と先延ばしにすることが出来る。つまり、クレハは簡単にはクレハの宿を再開する気はないのだ。徹底的にリーシア教にダメージを与えるためにまだまだこの騒ぎを続けるつもりなのだった。
そんなクレハの意図も知らずにすでに問題が解決したと喜んでいる彼らがすべてに気づくころにはすでに手遅れになっているのだった。
よろしければブックマーク登録や↓にある☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただければ大変うれしく思います。
また、作者は他の作品も投稿していますので興味がある方はそちらもお願いいたします。




