表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
239/387

232 ベスト公爵のその後

さて、ラルチュ軍務大臣の策略とはいえ、いきなりクレハ商会に押し入り自身に対してあのような対応をしたベスト公爵を貴族たちのヒーローのままにしておくクレハだろうか?否、断じてそれは否である。


クレハはああいう自分こそがルールと考えている貴族が大嫌いなのである。どうやって仕返しをしてやろうかと考えるも正直言ってあまり良いアイデアは思いつかなかった。いくら頭の弱そうな貴族でも相手は公爵なのだ。


クレハが商品を公爵領の人間に売らなかったとしても向こうには商人はいくらでもいるため、ベスト公爵にとっては大して痛手にはならないのである。そんな風に考えているとルークが面白い話を持ってきた。


「オーナー、大変ですよ!オーナーが少し調べて欲しいって言っていたベスト公爵なんですけどお抱え商会が公爵領を去って公爵のお財布が大打撃を受けているようですよ。」


「えっ、ちょっと待ってください。お抱え商会が公爵領から去っていったってどんなことがあればそうなるんですか!」


公爵領からお抱え商会がいなくなる、そんな普通では考えられない事態にクレハは声をあげて驚いていた。




ベスト公爵領からお抱え商会がいなくなった原因、それはベスト公爵がクレハ商会に突撃してきたことがすべての原因であった。正確にはクレハ商会の古参のファンである元祖組の目の前でクレハに対して乱暴を働いたことが原因だが。


元祖組つまりはクレハ商会の追っかけをするほどのファンがいわれなき罪でクレハに乱暴したベスト公爵を許しておけるだろうか?そんなことは絶対にありえない。あの現場を目撃していた彼らの中にはそんなベスト公爵の態度にはらわたが煮えくり返るような思いのものもいたのだ。


しかしながら彼らはただの商会の追っかけ、貴族相手に直接何かしようものなら自分たちが消されてしまうだろう。だからこそ、彼らは彼らの土俵で自分たちのできることをしたのだ。彼らが行った仕返しとは公爵領に存在している商会での不買運動だった。


「おい、知っているか?ここの領主であるベスト公爵、あの有名なクレハ商会で大暴れしたらしいぜ、しかも、クレハ商会には何の落ち度もないのによ。」


「マジかよ、いくら公爵様だからって流石にひでーよな。」


「そうだろ、それに今回は俺たちには関係がなかったがよ、もしもその標的が俺たちになったらヤバいぜ。今のうちに手を打っておいたほうが良いんじゃないか?」


「はっ、お前まさか反乱でも起こすのか?やめておけ、そんなことをしても何の意味もないさ、俺たちはただ黙って耐えるだけしかできないんだよ。」


「そんなことはない、俺、考えたんだ。あの公爵がクレハ様をあんな目にあわせておいて貴族たちの間ではヒーロー扱いになっているのが耐えられないんだよ。だからさ、公爵のお抱え商会で不買運動をしないか?なに、あの店では買い物をするなっていう噂を少しばかり流すだけさ。買い物をしないだけなんだから公爵に何かできるわけもない。」


「不買運動か、それはいいかもな。そう言えば最近はあの商会も公爵のお抱え商会になったからっていい気になりやがって俺たちの足元を見た商売ばかっかりしやがるんだよ。


あいつらがいなくなればまともな商会に客が行くだろうからいい機会かもしれないな!よっしゃ、やろうぜ、あんな商会の一つや二つ無くなったところで何も問題はないさ。」


商会の追っかけをする彼らだけあって、彼らが行う商会の評価は住民たちにとっては一種の指標のようなものだったのだ。


彼らがこの商会がひどいと言えば住民たちは敬遠し、すごいと言えばこぞって買い物をする。そんな商会の追っかけがベスト公爵が収める領地には何人もいたのだ。


そのような存在の彼らがクレハ商会であったことと同時にベスト公爵とWin-Winな関係にあるお抱え商会を批判すればどうなるか、結果は言うまでもないだろう。


ベスト公爵のお抱え商会は客足が遠のいたことによりこれ以上はベスト公爵に治める金も用意できないとベスト公爵領から撤退したのである。そんな商会が撤退するや否や今までは事業規模で煮え湯を飲まされていた商会が成長を遂げ、住人たちの暮らしはさらに活気づく事になる。


この騒動でお抱え商会から献金という名の金を手に入れることが出来なくなったベスト公爵はしばらくの間、金に困る生活が人知れず続くことになるのであった。




「ということなんですよ、何か弱みでも握れるかと思ったのですがすみません。」


「いえ、お抱え商人がいなくなったのです。それだけでも大打撃ですからね、自分で何かやったわけではないですが私たちの商会のファンの方が代わりに仇をとってくれたんです。


あの公爵には思うところはありますがそれで手打ちにしましょう。入ってくるお金も大きいですが出ていくお金も大きいのが公爵領というものです。そんな公爵領の大きな収入の一つでもあるお抱え商会からの献金が無くなったんですから公爵にとっては手痛いという言葉では表せないくらい慌てているでしょうね。その顔を思い浮かべるだけで私は満足です!それにしても元祖組の方でしたか?行動力がすさまじいですね。」


自身の商会のファンである元祖組の行動力にクレハがドン引きしていたのはここだけの秘密である。


よろしければ高評価、ブックマーク登録をお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ