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224 老人の主人

「だ、旦那様、大変でございます!」


「なんだ、騒がしいぞ。いつも言っているだろう、どんな時でも冷静さを忘れない。それが我が家の家訓ではないか!執事であるおぬしもそれを忘れるな。」


ドタバタと大声を上げ、騒いでいるのはあの日、クレハ商会でコーヒーの試飲を行った老人だった。彼はあのコーヒーの味見をした後、自身の使えるベスト公爵へと報告を行っていたのだった。


ベスト公爵とはクレハと同じコーカリアス王国の貴族であり、公爵であるため当然ながらクレハよりも身分は高くなる。


「す、すみません。私としたことが。あっ、それどころではありません、こちらをお飲みになって下さい。」


執事である彼はそう告げるとすぐさま公爵へとコーヒーを差し出したのだ。ちなみに、これは彼がクレハ商会で購入したものであったりする。


「はぁ、以前の件を忘れたわけではないだろ。私はもうコーヒーを見るのはこりごりだ。あんな恥をかいたのだからな。」


公爵は何かを思い出すようにため息を吐き、首を振ったのだ。


「分かっています、ですが、どうかお願いです。これを飲んでいただければ私が何を言いたいのかお判りになるはずです。どうか、お願いいたします。」


初めは執事の持ってきたコーヒーに対して渋っていた公爵だったがあまりにも彼が押してくるものだから仕方なく飲むことにしたのだ。


「はぁ、分かった、分かった。まったく、こんなものを飲んでなんだと言うのだ、それに、コーヒーなんてマズいものだろうが。・・・ん!何だこれは、これのどこがコーヒーなのだ、普通にうまいじゃないか!これはコーヒーじゃないぞ。」


公爵は執事に出されたコーヒーが自分の知っているコーヒーとは異なり、美味しいものであったため、これがコーヒーであるというのは間違いであると指摘したのだ。


「いえ、販売していた商会のものに確認をとったところ、これは正真正銘、コーヒーらしいです。しかも、特に高級品と言ったものではなく、一般的なグレードのものらしいです。」


「な、なんだと、だが、以前に私がパーティーで出だしたコーヒーとは比べ物にならないうまさではないか!これはどういうことだ!」


公爵はあまりのショックに机をたたきながら思わず立ち上がってしまった。先ほど、執事に家訓とやらを守れと告げたばかりであるはずなのに彼は早速それを破っているのだ。それくらい、公爵にとってこの出来事は大きなものだった。


「わ、分かりません。ですが、このコーヒーを購入したクレハ商会とは国王陛下や王妃様からも信頼の厚い男爵の商会です。ですので、嘘の商品を販売する可能性は極めて低いかと思われます。」


「そ、そんな馬鹿な、それでは私が恥をかいたあの一件は一体どういうことなのだ・・・。」


公爵の頭には思い出したくもない、ほんの少し前の出来事がフラッシュバックするのであった。


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