21 市場の独占
クレハは王都からピトリスに帰ってきた。彼女が街を出る前では商人たちが商売をできずに活気が少しずつなくなっていたが、今では住人達にも元気がなくなっていた。
彼女は自身の商会であるクレハ商会に戻りルークに帰還を告げる。
「ルーク、今戻りましたわ。いますか?」
「オーナー、お帰りなさい!」
ルークの元気な声を聴きようやくピトリスに帰ってきた感じがしたクレハであった。それと共に自分が王都に向かう前に比べ明らかに活気がなくなっていることが気になり、ルークに尋ねる。
「ただいま、ルーク。なんだか街全体に活気がなくなっているようですがどうしたのですか?」
「実は、商業組合の連中が自分たちにしか商品を販売できないことを利用して商品の値段をどんどん上げているんです。特にパンとかも高くなってしまって、おなか一杯に食べることができないんです。ですから、今のような現状に」
クレハは考えられないような現状に頭を抱えてしまう。そのようなことをすれば住人たちの不満がたまってしまい、商会としても終わってしまう。
今は彼らからしか買うことができないから住人は仕方なしに買っているだけなのだ。もしその縛りが無くなってしまえば、たちどころに住人たちはその商会で商品を買うことはなくなるだろう。
「そんなことをしたら、まずいことになることくらい誰にでもわかりますのに。まったく何を考えているんでしょう?」
「何も考えていないんだと思います。ただ値段を上げれば儲けも増えるとしか考えられないんですよ、あのような連中は」
「そうですね、ですがもうすぐ、それもおしまいです。今の事態を知った王妃様がいろいろと手を回してくださっていて、直にこの事態も収束します、ですから今が頑張りどころですよ。そうです、商品を売ることは禁じられていますが無料で渡すことは特に禁止されていません。この際、商品の宣伝と行きましょう。今ならみんな不味いパンで高いお金を払わされているのでしょう、でしたら余計に宣伝がうまくいきますわ」
「それなら街の皆さんもきっと喜んでくれますし、商品も宣伝できてお得ですね。それでは僕は近所の皆さんにそのことを告知してきます。それに雲パンもたくさん作らなきゃ!」
クレハとルークは商会の宣伝のためにパンを作り始めるのだった。
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