201 宿に突撃
「あの、香辛料を適正価格で買い取ってくれるってほんとですか?ぜひ、うちからも買い取って下さい、お願いします!」
「ちょっと待ってくれ!うちの香辛料の方が状態は良いぞ、ぜひ、うちのを買い取ってくれ!」
「あんた、何言ってるのよ!私の所の方が先に声をかけたんだから、私が先よ!」
現在、クレハ達が宿泊している宿には数多くの人間が押し寄せていた。なぜ、ここまでの人間が訪れていたのかというと先日、クレハが香辛料の取引を行った時に香辛料を定価で買い取るということを周囲の人間に広めて欲しいと言ったためだった。
クレハは香辛料であれば保存がきくため、すでに用意できるのであればすぐにでも買い取りたいとはなし、この大陸に来る際に乗ってきた船に大量の香辛料を積み込んでいたのだ。
クレハが大量に香辛料を買い取ったことによって今まで、貧しい生活を強いられてきた彼女はついにまともな生活をすることができ、涙を流しながらクレハに感謝していた。
だからこそ、そんな彼女の普段とは異なった様子を知った人間が彼女に事の真相を聞いたことによって香辛料を適正価格で買い取ってくれることが広まったうえに、彼女自身もそのことを自発的に広めていたことからクレハの元に今までヘーデュ商会に足元を見られていた生産者たちが押し寄せてきたのだ。
「ちょ、ちょっと待ってください。こんなに一気に押し寄せてきたら宿に迷惑が掛かりますよ!お願いですから、順番を守って下さい!」
「オ、オーナー、流石にこれ以上はマズいですよ。向こうで宿のおかみさんが変な笑い方をしていますよ、あれ、絶対にヤバい奴です。とにかく、どこか迷惑が掛からない場所に移動しましょう。宿を追いだされたらシャレになりません。」
「そ、そうですね。みなさん、ここでは迷惑になるので我々の船が停泊している場所に行きましょう。そこなら、商品を持ってきていただければ買取も一度に行えます。ここで騒いで宿に迷惑をかけるようでしたら買取は行いませんので騒がないでください!」
クレハがそう声をかけると、宿に集まっていた人間は一斉に静まり返る。彼らも、これ以上騒いでしまってはどうなるのかちゃんとわかっているのだ。
「とにかく、ルークは皆さんを船に案内してもらえますか?私は宿のおかみさんに話をしてきます。さすがにここまで騒いでしまったので謝罪くらいはしておかないと追い出されてしまいますからね。」
「分かりました、船に詰める分ならすでに買取を始めてしまってもいいですか?」
「ええ、そうしてくれれば助かります。おそらく、買取を行うためのお金はたくさんもってきていますし、香辛料も巨大な船ですので積み込みは可能なはずです。
もしも、船がいっぱいになってしまったのであれば一度、船だけ向こうの大陸に戻ってもらっても構いません。それならば次の船で私たちは帰ればいいだけですし、何隻かでこちらへ来ればさらに商品を積み込むこともできますし。
まぁ、それは買い取った商品の様子を確認してからにしましょう。とにかく、早くこの人たちをここから移動させてください。お願いしますね。」
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