200 大量買取の契約
「そうだったんですね、ですが、僕たちはあんな商会とは違います。適正価格で取引頂いて大丈夫です。ですよね、オーナー。」
「ええ、それに、配達などのサービスは行わなくて大丈夫ですよ。私達の商会の人間が引き取りに行くので香辛料だけ用意していただければ大丈夫です。
実はですね、私達はこの大陸とは別の大陸から船で来ているんです。ですので、船を用いた貿易を行いたいと考え、香辛料を買いたいと考えていたんです。
船となれば量はかなり多く買い取ることになると思いますので港までは私達で運ばせていただきます。どうか、私達と取引をしていただけないでしょうか?」
クレハが大量に香辛料を買い取りたいということを彼女に伝えると目を輝かし始めた。
「ほ、ほんとに香辛料を大量に買い取ってくれるんですか?それに、船で来ているって言いましたよね。それって、信じられないくらい積み込んでいくってことですか?」
「は、はいそうですね。小さな船で貿易を行っても船の維持費などで赤字になってしまいますのである程度の量は積み込む予定です。」
彼女が目を輝かせていたのには理由があった。今まではヘーデュ商会のせいで全くと言っていいほど香辛料が売れていなったのだ。しかしながら、クレハ達が大量に買い取ると言っていたため、今までの貧乏な暮らしを脱却できると考えたのだ。
「ありがとうございます、これで野草を食べる生活や香辛料一か月生活をしなくて済みます!」
彼女はクレハの手を握り、ぶんぶんと上下に振っていた。しかしながら、クレハは今の言葉で気になることがあった。
「あの、香辛料一か月生活って何ですか?」
「えっ、あぁ、食べるものが自分が育てている香辛料しかなかったのでそれだけを食べる生活を一か月、続けていたんです。あれ、ほんとに大変なんですよ、毎日香辛料を食べているせいでお腹が痛くなってきますし、体調も悪くなるんですよね。ほんとに、ありがとうございます。」
「く、苦労されたんですね。できるだけたくさん買い取らせていただきますから、何か美味しいものを食べてください。」
クレハは想像以上の彼女の生活に、ドン引きしていた。一か月も香辛料のみを食べ続けるなど正気の沙汰ではない。いつしか、クレハが彼女を見る目は温かい目になっていた。
「そうだ、あなたのほかにもヘーデュ商会のせいで作物が売れていないという人はいませんか?こちらとしても船で貿易を行うのであれば大量に買い取りたいので何人か紹介してほしいのですが?」
「はい、それならいいですよ。みんな、ヘーデュ商会に足元を見られて困っているので正規の値段で買い取ってもらえるのであれば喜んで売りに出すと思います。」
そんな彼女の話を聞き、クレハは久しぶりに悪い顔を見せる。
「なるほど、確かにそうですよね。普段は安い料金で買いたたかれている中、通常の料金で買い取ってくれるという人間がいれば誰しもそちらに売りたくなるというものです。
あの、できうる限り、声をかけて頂けますか?可能な限り家で買い取らせていただきます。私達の大陸であれば香辛料が飽和するということはないですからね。
そうすれば全員が私達の場所に売りに出してヘーデュ商会に売りに出すものはいなくなるでしょうね。あの傲慢な態度も少しはましになるはずです、ふふっ、ふふふっ。」
「わ、分かりました。知り合いに声をかけておきます。」
こうして、ヘーデュ商会の知らぬ間に、ヘーデュ商会つぶしが始まったのであった。
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