胸踊らせた学園生活は夢の跡
跳ねるような軽やかな足運びで少年は走っていた。
顔の筋肉はダラしなくもすっかり緩んで、目は遠くの方を映して、心ここに在らず、無邪気な子供のそれである。
何故なら、今日から僕は中学生!「ひゃっほー!」
若さゆえに恥知らず。度々叫びながら今日から通学路になった桜並木の淡いピンク色のトンネルを進んで行く。
先輩や同級生の視線や失笑が気にならないのかって?
愚問だ。僕はそんな一行に目もくれない。認識などしていない相手など気に留ることなどないのだから。
真新しい鮮明なブラックの制服に、3年間お世話になる相棒に早速、致命的なまでの皺が寄ろうとも、歩みは止まらない。
中学校の正門に到着するまでは。
って、感じでやっと着いた、正門前で僕は両膝に手をやり、絶え絶えの呼吸を整え顔を上げると。
夢にまで見た校舎が目前に迫っていた。
あと一歩、踏み込めばそこは敷地内。
ゴクリ。
「何?あの子_____もしかして新入生?」
「目キラキラさせて____なんか可愛いかもっ....」
「え〜?あんなのがタイプ?...さてはショタコンだな?」
「ち..違うよっ!?...ただ..なんか...その...あの..可愛いなって...純粋に...ちっちゃくてって意味で...別に...」
「ほうほう、なるほどなるほど。お前は今日からショタ美だな」
「えっ!?酷くない!?」
「嘘嘘〜怒んないで〜♪」
わちゃわちゃと楽しそうに会話しながら横を通り過ぎて行ったのは、女生徒2人。___僕の先輩に当たる方々だろう。
思いもよらず目は吸い込まれたように。ショタ美と呼ばれた綺麗な先輩に向けていた。
やばっ。
彼女の振り返りざまの一瞥に合わせてしまった自分がいた。
「..あぁ...やっぱり可愛い...抱きしめたい...」
「おいおい、犯罪だけは犯すなよ?ショタ美」
「んもう〜!ショタ美言うなっ!」
「はいはい」
最後にチラリとショタ美さんは僕に笑顔を見せてきた。
ぽっ....。と自分の顔が熱くなったのが分かる。
ここは天国...いいや、楽園か?_____学園です。
彼女に彼氏さんは居るのかな?有り得るかもしれない、可能性に、胸が高鳴る。
男子は学ラン、女子はセーラー服。統一された衣服に皆一同が袖を通す、この光景は新鮮で新鮮で、ウキウキが溢れた。
これから入る学び舎で、いったいどんな仲間たちと出会うことになるのだろう。小学校や保育園時代からの友人やまったく面識のなかった人とも一緒になることだろう。
だが、きっと僕なら皆と上手く付き合っていける。
最高の仲間たちとどんな青春の1ページを綴っていけるのだろうか。
見通しの良い開けた未来予想図に僕は胸を膨らませる。
浮かれ過ぎた僕は盲目。耳も同様の症状が現れ
「翔っっ逃げろぉぉぉーーーー!!!」
背後からの友人の声も
ブーーーーー!!!鳴り続ける車のクラクションの音も聞き漏らしてしまうとは、思いもしなかった。
ガン!
ゴリ..ゴリゴリ...ゴリゴリゴリ




