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旅路

少し長めになりました。

残酷な表現もあります。苦手な方は、ブラウザバックでお願いします。

 祖父母に、今から旅に出る旨を伝え、父母には手紙で伝えると言うと、祖父は「ずっと何かを思い詰めていた様だったから、旅に出るのは良いが、ロベルト達に直接会ってから行く様に。」と、言われてしまった。


 誰にも言わないが、厳しい旅になるのは予想出来るので、このまま会えない事もあるかも知れない。

 顔を見せてから、行く事にした。ちなみに、ロベルトというのは、父の名だ。


 父母は、何か言いたげだったが、私の堅い決意を感じ、快く送り出してくれそうだ。

 

 「どの位出るつもりだ?一ヶ月程か?」

 「いえ、1、2年は帰らないつもりです。成るべく、怪我のない様にするつもりですが、音沙汰がなくなれば、私は死んだものとしてもらって良いです。」


 そう言うと、母は涙を流し、「何故、そんなに長く旅に出ようと言うのです?出掛ける理由は何?」と、聞かれたくない事を、聞いてきた。


 「武者修行です。私は、家の庇護なく世間を見たいのです。」と、誤魔化した。


 爺は、平民が使うような旅装を用意してくれていた。助かった。


 歩こうと思ったが、【マザー】のいる場所が遠く、間に合わないといけないので、馬に乗っていく事にした。


 

 そして、私は方位磁石に導かれる旅に出た。


 


 予想もつかない旅なので、なるべく早く移動したせいか、1日でかなり進んだようだ。


 それほど大きくもない町の宿屋に止まり、身体を休め、次の日に備えた。

 

 そして、その晩、事件が起こった。



 寝静まった夜に、私の部屋に何人かが忍び込んできた。

 疲れた私は、すぐに気付かず寝入っていたが、コソコソとした話し声で、目が覚めた。


 「こいつ、平民のようなカッコしてるけど、ゼッテー貴族だぜ。金やお宝持ってるはずだから、早く見つけろよ。こいつが起きると、めんどくせーからな。」


 寝ぼけていた頭が、覚醒し、飛び起きた。3人のガタイが良い男達が私の荷物を、物色していた。


 「何をしている!」


 「やばい!もう、殺すか?」


 「生きてると余計やばいし、殺そ!」


 そんな簡単に殺されてたまるか。私は剣を持ち、対峙した。


 相手達も、あまり切れない様子の剣を取り出した。私は、剣に自信があったが、相手は剣の技というより、喧嘩のようで、剣技のルールを無視して向かってくる。


 相対しながら、ここで殺されない為には、ルールなど関係がないと知った。

 そして、私は人を斬った事など無かった事に、今更ながら気付いた。


 人を斬るのは恐ろしいが、斬らねば自分が斬られ、殺される。


 無我夢中だった……


 相手の血なのか、自分の血なのかわからないが、飛び散っている。

 殺されなかったのだ、と、気付いた時は、忍び込んだ男達が倒れ、呻いている声が聞こえた時だった。


 騒ぎに気付き、部屋の近くにいた宿の者を呼び、男達を自警団に突き出した。

 男達は、あちこちの宿に忍び込んで、金品を奪っていた盗人だった。


 部屋が、血だらけになってしまった事を詫びたが、店主も盗人を入れてしまっていた事を謝られてしまった。


 それよりも、私の服装だ。あいつらに目を付けられる様な、服装だったのは迂闊だ。

 何度も、この様な事があるのも困る。店主に、「これからの事があるから、もっと平民に見える旅装を売っている店を紹介してもらえないだろうか?」と、尋ね教えてもらった。


 町の古着屋に行き、今までの服と着替えを売り、新しく旅装を整えた。


 道すがら、昨夜の事を考える。簡単な命のやり取り、人を斬る感触。

 先ほどまでは、気持ちも昂っていたから気付かなかった。


 吐き気がした。


 道を外れ、一頻り吐いた後、見た目だけではなく、言葉遣いも平民の様にし、目立たないようにしよう。極力、話さず、周りの言葉遣いを真似よう。

 

 生きて、リリーナの元に戻る為に。


 町から森へ入る。


 森では、野宿だ。初めは、焚き火の仕方さえわからなかった。

 水の確保、食料の調達は、苦労した。

 森では、全て自分1人で捜さなくてはいけない。そんな当たり前のことさえ、わからなかったのだ。

 木の実を取り、川で魚を捕ったりもした。この間は、ウサギも捕まえた。

 それを、食べられる様に捌くことの、大変さもわかった。

 野宿での眠り方も、最近できる様になった……こんなに大変だと思わなかった。


 1人きりで、焚き火を見ていると、思い出すのはリリーナの笑顔だ。

 わからない事だらけで、辛いと思ったが、【マザー】に会い、リリーナと生きる事を願いに行くという気持ちは、なくならなかった。





 三ヶ月経った。




 俺は、すっかり旅の冒険者風情に見える様になった。


 道中に、ちょっとした依頼をされる様にもなったが、俺は道を急ぐ身だ。短時間の依頼なら、受ける事もあるが、基本は受けない。


 この間、俺の事を『漆黒の魔神』と呼ぶ奴がいた。

 どうやら、俺の黒髪とヘーゼルの瞳と、黒い服装がそう見える様だ。魔神と呼ばれるほど、殺した事もない。

 と、いうか、殺人などした事は、断じてない。きちんと、急所は外して、斬っている。

 黒い服は、目立たない様来ているだけだ。

 二つ名がついた時点で、目立たないという目論見が、崩れ去った気もするが……


 初日に、人を斬って吐いたのが、懐かしく感じる程には、人に剣を向ける事に、戸惑いは無くなった。


 小さな町や、大きな街、村など人が住んでいる所は、大抵トラブルが起きていて、何故か剣を向ける事になる。

 俺は、トラブルを見たら見過ごせない質なのかも知れない。


 だから、イチャモン付けられてる老人や、荷物を盗まれている家族に苛ついているんじゃない。


 イチャモンつける奴、盗人に、苛ついてる。

 俺のイラつきを、全力で受け止めなければいけない奴等に『漆黒の魔神』と二つ名をつけられた様だ。


 いろんなイライラを、そういう奴等でウサ晴らししてるから、何割増しかで恐ろしいのかもな。


 後、どの位で【マザー】に会えるのか、見当もつかない。



 半年経った。



 流石に、この方位磁石が真っ直ぐ【マザー】の居場所を知らせてくれているモノではない、と気付いた。


 町などから、森に入り、また町へ。地図上でも、行ったりきたりや、ジグザグに向かったりしている。


 我がリーフラウ国の地図は、見た事もあるし、大体はわかっているから、国内をフラフラしている様にも見えなくはない。最近は、国外にも出る様になっている。国境の町から森へ入ったりもしている。



屋敷を出てから、もう10ヶ月は経った……


 俺がバンブーナ侯爵の息子と分かる奴はいない様に、思える。

 元々、背は高い方だったが、最近は筋肉もかなり付いて、身体に厚みが出た様にも思える。この間、学園の同級生に出会ったが、相手は俺に全く気付く事も無かった。

 環境が、人を変える事にという事も、驚いた。


 国外のこの町は、初めて来た。そして、毎回の事ながら、年若い男というか、少年がひったくりにあっていた。何故、こんなに遭遇するのか分からないが、一応、引ったくった男の腕を掴み「おい、今、何やった?」と、尋ねた。


 腕は掴んだが、声を掛けただけなのに、「スミマセン。ちょっとした出来心で…スミマセン…斬らないで…」と、もう既に、涙ぐんでいる。


 剣も抜いてはいないし、今までいきなり斬った事などないぞ。そんなに怖い顔になってしまったのか?

 表情には、出なくなったが、ショックだ。


 引ったくった物は、持ち主に戻し、ついでに、ひったくりの男には、脅しをかけておいた。


 少年は、感謝をしてくれていたが、「これから、お前も気を付けろよ。」と、だけ言っておいた。


 すぐに宿に行き、ベッドに腰を掛け、リリーナの涙の宝石を取り出した。

 それに、そっと口づけて、握り締め額に当てた。そうすると、リリーナと繋がっている様に思えるからだ。


 これは、毎晩の儀式だ。


 もう、【マザー】と会えず、このままリリーナが、手の届かない場所に行ってしまいそうな気がして、息をするのも辛い。


 リリーナは、『息ができなくなったら、これを口に含む様に』と、言っていたが、そんな事をしてしまったら、リリーナを感じる物がなくなってしまう。


 そんな事は、出来ない。


 リリーナの事を考えると、すぐに矮小な心のステアルトに戻ってしまう。


 見た目が変わっていても、全く変われない俺のままだった。



 


 

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