アルベルトの独り言
幼馴染みのステアルト・ヒペリカムは、見ているだけでも面白い男だが、付き合うともっと面白い。
とにかく、真直ぐな心を持ってるし、全てが全力だ。
だから、悪戯はしても、陰険なものは無かった。
悪戯も全力だった……
今思えば、悪戯の範疇を超えていた様な気もしないでもないが、俺も小さかったから、記憶は定かでなはい。
ある時の悪戯は、使用人の子どもから、泥団子の作り方を教えてもらったステアルトは、庭の片隅に泥を作り、ひたすら泥団子を作っていた。(俺も一緒に作ったから、覚えている。)
出来上がった泥団子を、車寄せに敷き詰めていた。
高位貴族の領地の城だから、そこそこの広さがあったから、全てを埋め尽くすほどでもなかったと記憶しているが、そこそこ埋めつくされてた様に思う。
何人かで一緒に作っていたが、俺を含めて直ぐに飽きてしまっていたが、ステアルトはずっと作っていた。
だんだん、手早く作れる様になり、最後の1つを車寄せに置いて、満足そうに笑って言った。
「貴族を辞めて、泥団子屋さんも出来る位、上手くなった。」
眩しかった。
その時に、俺はあいつに付いていく、と決めた。
ーーーーその後、かなり怒られたらしい。
まだあったな。
庭に、庭師が置いていたのか、細いロープがあった。
それを見たステアルトは、このロープを、木と木に繋げたら面白いんじゃないかと言い出した。
俺を含め皆は、何が面白いかはよくわからなかったが、やって見る事にした。
ステアルト以外は、木の幹に結ぶと思っていたが、ステアルトの考えは違った。
木の、上の方で結び繋げると言うのだ。
そして、木に登るのは危ないから、自分が登って結ぶから、ロープを運んで欲しいと言い出した。
猿の様に木に登り、ロープを結ぶステアルト。次々と、木と木をロープで繋ぎ、5本目の時に庭師に見つかり、ステアルトの父に怒られた。
落ちたら、ただ事では無いし、当たり前だ。
今ならわかるが(当たり前だが)、あの時はわからなかったんだよなぁ。
ステアルトは怒られながら、全部自分の計画で、他の者は協力して貰っただけで、全く悪く無いから、怒られるのは、自分だけで良いんだ、と訴えていた(本当の事だが)。
あの時は、使用人の子どももいたし、同じ事をしても俺達とは、同じにならない。
ステアルトの申告があるのと無いのとでは、対応が変わる。
俺は、ステアルトは、正直だなと、感心していただけだった。
ーーーーステアルトは、かなり怒られたらしい。
そのあとくらいじゃ無いかな。剣技を習い始めたのは。
今思えば、有り余る体力を消費させる為だったのかもしれない。
俺も同じくらいから、親に強請って始めた。
一緒について行きたかったからね。
剣技も、熱心に取り組んでいたから、近辺で同じ様な貴族子息の中では、抜きん出ていた。
ある時俺達は、ヘマをしてしまった。
子ども達を集めた、大きな茶会に参加していた時、直ぐに飽きた俺達は、枝を見つけて剣技ごっこを始めた。初めは、型を見せるだけだったのに、いつの間にか、俺とステアルトが、打ち合いを見せる事になって、戦い始めた。その内に白熱して、俺の枝が弾かれ、テーブルの上に飛んでいった。
すぐさま、アルベルトは丁寧な詫びを言っていたが、そこに座ってた令嬢達は冷ややかだった。
なんで、みんな冷たいんだ…と、思っていたら、アルベルトの従姉妹のキャローセル嬢が教えてくれた。
「私達は、貴族の令嬢なのよ。あの枝で、たとえ小さくても、顔や体に傷をつけたら、責任問題で結婚する事になってしまうわ。私達も、そんな風に結婚が決まりたく無いし、貴方達もそんなの嫌でしょう。気を付けて。」
アルベルトも賢いが、キャローセルはもっと賢かった。そして、綺麗だ。
俺は、キャローセルを守れる様な男になりたい、と思った。
キャローセルは、俺の初恋だ。
最近は、漸く手を繋ぐところまできた。
……長い道のりだった。
手を繋いでも、怒られないんだから、もう恋人って言っても良いんじゃ無いか?と思っている。
後は、言質を取るだけだ。
恋人になって、手を繋ぐだけじゃなく、キスだって…その後だって…あーーーー、それはまた次の機会に話そう。
ステアルトは、恋をしたらしい。
経験したから、わかる。あれは、恋をした顔だ。
妹への偏愛から、卒業したんだな。
良い事だ。
ステアルトは、剣の腕もあるし(騎士団に誘われていた)、頭も良く、良く気が付く(文官勤めをしないかって、声を掛けられていたのを見た)。
それなのに、女性に対してのみ、考えが斜め上なのか、ポンコツ感があるんだよね。
妹以外、目に入らない様だったし。
剣も勉学も、追いつけ追い越せの気持ちで居たが、恋は、俺の方が先に知ったからなぁ。
彼女に、会えたら嬉しいし、会えない時は寂しいし、上手くいかなくて、辛い時もあるけど、その後に会えた嬉しさは何にも例えられない気持ちだ。
……恋を楽しめなんて、偉そうに言ったけど、本当は……楽しむところじゃ無い、必死な毎日だ……
俺で良ければ、力にならないとな。
まず、花束のセンスが良い花屋と、令嬢に人気の菓子屋を教えなければ。
そして、何より大切な事を、言っとかないと……
自分の思いばかりを訴えるのではなく、相手の気持ちも考える。
これだ。あんまり、グイグイ行くと、かえって嫌がられる時もあるからな。
って、わかっちゃいるけど、キャローセルによく言われてるんだよね。ーーーこれ。
……ははは……
ステアルト、上手く行くと良いなぁ………
誰の事、好きになったんだろ。




