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7話 旅立つ兄と初めての魔物

ディシディル…俺が元いた世界とは違う、いわゆる異世界…その世界は剣と魔法のファンタジーなだけでなく、願いを叶える為に試練を受け、その全てを乗り越えることが出来ればその願いが叶うというおまじないまである。


こういうものは大抵、伝説だとかおとぎ話だとかで眉唾だけど、何年かに一人は願いを叶えるものがいるらしいからそんなに珍しいものじゃないらしい。だから、おまじない程度の扱いだそうだ…とは言っても簡単にはこなせるはずはなく脱落者も多いそうだ。


それでも…俺は妹の唯にもう一度会うために旅に出た…どんなに困難でも苦しくても…絶対に叶えるために…


ただ、それでも…難しいものはどうやっても難しい…


「どこだ…ここ…」


迷った。


最悪だ。最初に呼ばれた街から出発して二日目。地図通りに進んでいれば今ごろは次の街が見えるぐらいの街道にいるはずなのに俺は今山の中にいる。幸い、整備された道にいるこらこれ以上迷う可能性は無いと思うけど…それよりまずいのはもうすぐ日が暮れる事だ。


聞けば、夜の山道は活発になった魔物達が現れて道行く人を襲うらしい。普通なら傭兵を雇って乗り越えようとするらしいが金も無い俺に誰もついてきてくれなかった。一応、願望者への協力は賞金が出るらしいけど当てになら無いと言って一蹴された。


「どうしよう…戻るべきかいっそ進んでみるか…この先にも街はあるみたいだし…」


次の試練を受ける場所は啓示を受けるとか教えてもらうとかではなく自分で探すらしい。街の教会で受けたり森の奥深くや山頂とか…それを見つけるのも試練の一つだとかで司祭は「信じるままに進めばよい」とだけ言って俺を見送った。


「っ!!」


一瞬、木々の向こうから草の揺れる音が聞こえた。


「人…じゃないよな…」


明らかに人が入るような場所ではない所からの音…それは、ゆっくり鳴り続けこちらに近づいてくる。俺は餞別としてもらった剣を抜き構える。もちろん、こんなもの使ったことあるわけないから漫画やゲームの見よう見まねだ。


初めての剣。初めての戦い。初めての魔物。初めての死の恐怖…


「いや、死ぬのは一度経験してるか。」


なんて、一人で冗談を言えば少し気も楽になり剣を握る手により力が入る。音の方向を真っ直ぐに見据え襲撃者に備える。


「さあ、来い…叩き斬ってやるっ!」


叫び声を上げると同時に木々の間から何かが飛び出してくる。すぐさま剣を横に振りそれを斬りつける。剣先から何かにぶつかった感触が伝わり、吹き飛ばした事がわかった。


「当たった!?」


すぐに何かが吹き飛んだ先を見ると、そこには狼がいた。いや、たぶん狼の形をした魔物。薄暗くてしっかり見えないが赤っぽい体毛に大きな牙、大型犬より更に大きい体…俺がしっている狼よりよっぽど攻撃的な見た目をしてる。


そして、剣を当てることは出来たがそれは奴の体毛に阻まれ肉には達していなかってようだ。つまり、斬れてない。ただぶつけただけ。狼からしたら不意打ちに失敗してちょっと痛い反撃を受けた程度。


「まだまだ…元気みたいだな。」


こちらを警戒してるのか睨み付け唸り声を上げる狼。


息を荒くしながら剣を構え、震える脚でゆっくりと距離を取る俺。


先に動いたのは狼だった。


真正面から突っ込んで来るからまた剣を振り抜き払いのけようとしたら狼が横へ飛びそれを避ける。体勢も整える暇も無く狼はすぐに飛び付き鋭い牙を俺に向けてきた。


しまったと思い、なんとか避けようとした俺はそのまま勢いよく転んでしまった…それが、幸いしたのか狼は俺を飛び越して何もない地面に着地した。


慌てて立ち上がり剣を構え直すが、狼は今ので実力差を見抜いたのかまたすぐに襲いかかってくる。剣を振りつつ横に避けるがそれも叶わず狼の爪が脚を切り裂く。


「ぐぅっ!?く、くそ…」


慣れない痛みに力が入らず立っているのも辛くなってくる。狼はゆっくり近づいてくる。まるで、勝利を確信したような。ご馳走にありつく前の舌舐めずりをしてるような。笑いながら近づいてくるように見えた。


「く、来るな…来るなら斬るぞっ!」


怖かった。あの爪が牙が俺の体に刺さり、肉を貪るかと思うと恐怖が全身を覆い身動きが取れなくなる。必死で叫び威嚇をするが狼は気にも止めず進んでくる。迫ってくる死に俺はどうしようも無くなる。このままゆっくり進んでくれば斬れるか?また、フェイントを仕掛けてくるか?それとも俺の知らない動きで来るか?思考が巡るばかりでなにも出来ない。


「っ!?」


次の瞬間、狼が飛び付いてきた。俺は何も考えずにただ体が勝手に動き剣を振り抜いた。


「………っ!」


「…………………あ……れ?」


剣に何か当たった感触は無い。体に異変も感じない。いつの間にか閉じていた目を開くと…


「よぉ!危ないところだったな!!」


大きな剣を持った大柄な男が目の前にいた。そして、その足下には狼が真っ二つにされていた。


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